2020年11月20日
株式会社日立製作所
日立は、広島大学および広島県日比野病院と共同で、脳梗塞後のうつ病発症メカニズムの解明に向け、うつ関連症状の脳領域を推定する技術を開発し、右ローランド弁蓋部*1がうつに関連する領域であることを初めて見出しました。具体的に開発した技術は、脳梗塞患者の複数のうつ関連指標の類似度により患者グループを分類したデータ駆動型*2分析と、MRI脳画像を用いた脳損傷解析です。本技術により医師を支援することで、脳梗塞患者は、より適切なケアを受けられるようになることが期待されます。今後、日立は本技術をうつ関連症状だけでなく、脳梗塞患者のさまざまな症状に適用していくことで、病院でのリハビリへの導入を推進し、患者のQoL向上への貢献をめざします。
今回、脳梗塞患者の複数のうつ関連指標(ストレス、抑うつ、意欲低下、不安)のスコアデータの類似度を用いたデータ駆動型分析により、脳梗塞患者が4つのグループに分類されることが明らかになりました。また、脳梗塞患者の脳損傷度分布データベースと照合し、患者グループ間の脳損傷度分布を比較した結果、「右ローランド弁蓋部」と患者のうつが関連していることが分かりました。「右ローランド弁蓋部」は、感情処理だけでなく内臓感覚にも関連すると言われる脳領域で、本技術により脳梗塞患者のうつ関連症状の脳領域であることを初めて見出しました。
広島大学の指導のもと、日比野病院にて脳梗塞患者のMRI脳画像とうつ関連指標(ストレス、抑うつ、意欲低下、不安)を取得しました。通常、各指標の判定基準(カットオフ値)で患者状態(ストレス高/低など)が判定されますが、多様な患者状態を分類するため、データ駆動型分析(クラスタ分析)による分類を取り入れました(図中①)。また、日立は脳科学の研究開発で培った解析技術を活かし、MRI脳画像の脳領域を分割し、各領域の損傷度(%)を数値化し、損傷度分布をデータベース化しました(図中②)。これらの技術を統合し、うつ関連症状の脳領域を推定する技術を開発しました(③)。
脳の機能面(うつ関連の症状)から見た分類(①)と、脳の構造面(損傷度)から見た分類(②)を照合させることにより、脳梗塞患者の症状がどの脳領域に起因しているかを推定する技術となります。今後は本技術を発展させることにより、うつ関連症状だけでなく、脳梗塞患者のさまざまな症状に適用を検討していきます。
開発技術の概要