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ミドルウェア

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複雑化する経営環境、激変するビジネス環境、さらに想定外の 事象など、環境への変化に素早く適用することが企業に求められ ています。こうした中で企業のIT部門に求められるのが、業務シス テムを素早く立ち上げ、臨機応変にシステム構成を変更できるこ とです。この手法として「クラウド」に注目が集まっています。

クラウドへの期待 〜「所有」から「利用」へ〜

クラウドは、業務システムを「所有」するので はなく「利用」していくといったパラダイムシフト の中で生まれた業務システムの新しい導入形 態です。ビジネススピードが加速している現在、 フルスペックでサービスを提供開始するよりも、 システムを短期に開発して、他社に先駆けて サービスインしなければならない場面が増えて います。クラウドは、オンデマンドで必要なITリ ソースを利用できるため、まず最低限の機能を サポートして、短期間でサービスインすることが できます。また状況に合わせて、小刻みに機能 の充実度を高め、段階的にサービスを拡充でき る点もメリットといえます。

図1:クラウドの導入 スピードへの期待
図1:クラウドの導入 スピードへの期待

では、クラウドを実現するための一要素であ る、サーバ仮想化はどの程度浸透しているのでしょうか。従来の 業務システムはファイルシステム用のサーバ、社内メール用の サーバ、基幹システム用のサーバなど、個別に業務システムが構 築されており、業務システムごとに足りないハードウェアを拡充し てきました。これを解消する手段として活用されてきたのがサーバ 仮想化です。多くの企業がサーバ仮想化によりサーバ台数を削 減して、着実にコスト削減効果を上げてきています。

今後、さらに効果を高めていくには、仮想化によって集約した サーバ、ネットワーク機器、ストレージなどのITリソースを部門や拠 点レベルでなく全社レベルで共有し、必要な分だけ配分する仕 組みが必要になります。このITリソースの有効活用でITベンダ各 社が推進しているのが、企業内にクラウド環境を構築するプライ ベートクラウドです。プライベートクラウドはサービスの提供形態に よって、ハードウェアとOSを提供するIaaS(Infrastructure as a Service)と、ハードウェアとOSに加えてミドルウェアなどをセット アップした形で提供するPaaS(Platform as a Service)に分類 できます。

IT リソースの適切な配分と集約にはPaaS が有効

では、ITリソースを有効活用していくには、システムのインフラ 管理者と業務アプリケーション管理者の両者の立場から見て、 IaaSとPaaSのどちらがより適しているでしょうか。インフラ管理者 は、ハードウェアやミドルウェアの管理・メンテナンスがしやすい、ま たは不要な環境を望んでいます。一方、業務アプリケーション管 理者は、業務アプリケーションが必要としているITリソースを迅速 に提供してくれる環境を望んでいます。

両者の要望を満たすサービスの提供形態がPaaSです。ITリ ソースを柔軟、かつ迅速に準備できる仕組みとして、ハードウェア とOSをクラウドで提供するIaaSも候補として挙げられますが、業 務アプリケーションを動かすまでのシステムの構築・ 運用に手間が掛かるというデメリットがあります。この 点PaaSはITリソースを迅速に配備できる上に、アプ リケーションサーバソフトウェアやデータベースソフト ウェアなどをインストールし、必要な設定も施した状 態でユーザーに提供するため、業務アプリケーション を稼働させるまでの時間を短縮できます。業務アプ リケーションの稼働環境を素早く、自動的に提供す る仕組みとして、今後PaaSを利用する企業が増え ていくことが予想されます。

業務アプリケーションの観点からITリソースの使 いやすさを考えた際、プロセッサのパワーなどのITリ ソースが管理しやすくなっている必要があります。IT リソース間の管理や監視、これらをつなぐ役割を担 うのが、PaaSで提供されるミドルウェアです。日立ではこうしたクラ ウドサービスを支えるミドルウェアとしてクラウドコンピューティング の適用を促進するSOAプラットフォームCosminexus(コズミネク サス)やデータベース基盤であるHiRDB(ハイアールディービー)、 さらに運用管理基盤であるJP1(ジェーピー・ワン)などを提供し、業 務アプリケーションシステムの設計・構築・運用を支援しています。

図2:PaaSとIaaSの比較
図2:PaaSとIaaSの比較

クラウド化によって変化するIT 部門の役割

企業が活用しているサービスとしては、パブリッククラウドの一形 態であるSaaS(Software as a Service)のようにアプリケーショ ンの機能を丸ごと、外部サービスとして利用することも考えられま す。今後は、こうした外部のサービスと企業内にクラウド環境を構 築するプライベートクラウド、さらに既存のオンプレミスで提供して きたサービスとを連携していくことも想定されます。これからの企業 のシステム形態では、現在の業務アプリケーションで十分というも のはオンプレミスとしてそのまま残し、変化への即応が要求される ものはリソースを柔軟に使えるPaaSとして提供し、汎用的なサー ビスでも足りるものはアプリケーション開発が不要なSaaSとして 提供する、というように投資を配分していくことになります。

こうしたシステムを将来的に運用することになった場合、 企業のIT部門はシステム全体を俯瞰しつつ、システムの 最適化を検討する必要がでてきます。従来は、お客さまの ニーズに合わせた業務アプリケーションを開発・提供するこ とが、IT部門や情報システム部門の役割でした。しかし、今 後は複数のクラウド環境、既存のオンプレミス環境で、最 適なITリソースを配分できるよう管理していくことが求めら れます。

また、新しい技術を他社に先駆けてお客さまに提案・導 入する場合にも、IT部門には異なる役割が求められます。 従来はIT部門の担当者が技術内容を咀嚼し、事例や実績 ある技術に限ってお客さまシステムに適用するという流れ でした。しかし、クラウド環境であれば、新しい技術をオンデ マンドで提供できるため、試用や検証という形でお客さまシ ステムに導入できます。

日立ではクラウドソリューション「Harmonious Cloud」を提供 し、お客さまのニーズに合わせたクラウド環境の導入だけでなく、 試用や検証サービスを提供しています。日立が提供するクラウド 環境を利用すれば、部分的/試験的に新しい技術を試用でき、 移行検証できます。また、企業のIT部門は、インフラ監視、障害監 視を日立のデータセンターへ任せることにより、ITリソースの適切 な配分に集中できるようになります。こうしてクラウド導入によって 生まれた余力や人的リソースを、コア業務や新規ビジネスの投資 へつなげることで、企業の競争力向上が期待できます。

図3:これからの企業のシステム形態
図3:これからの企業のシステム形態

特記事項

  • この記事は、「会報誌 HITACHI USER 2012年1月」に掲載されたものです。
  • その他記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標もしくは登録商標です。