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新サービス創出に適した「次世代運用基盤」を構築。
「JP1 Version 8」と「BladeSymphony」の
相乗効果で強力な統合管理を実現

クレジットカード大手の株式会社ジェーシービー(以下、JCB)は、時代のニーズに対応できる次世代基幹系システムの構築に取り組んでおり、同時に、オープンシステム上の周辺業務システムも刷新中である。オープンシステム全体の次世代運用基盤も、日立の統合システム運用管理「JP1 Version 8」と統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony(ブレードシンフォニー)」で新規に構築。統合管理を徹底し、効果的な性能管理によるハードウェア・リソースの有効活用と、可用性向上を目指している。次世代運用基盤は2007年2月に社内リリースし、2007年度中に、約20の業務システムすべての移行を完了する予定である。

次世代のサービスを創造していくために次世代運用基盤を開発

岡本 圭介 氏の写真
株式会社ジェーシービー
システム本部
加盟店システム開発部長
岡本 圭介 氏

規制緩和などクレジットカード業界を取り巻く環境が激変するなか、JCBは、公共料金、食料品、ETC(交通)、医療など、カード決済分野の拡大に取り組んでいる。また、少額決済市場の開拓を目指し、非接触IC決済サービスQUICPayを積極的に推進している。

「こうした多様なサービスをタイムリーに市場へ投入し、セキュリティ管理を強化しつつ、効率よいシステム運用をしていくという新たなニーズに、現行システムでの対応は難しくなってきました。2007年度中の全面稼働を目標として、次世代基幹系システムの構築に取り組んでいます」と岡本氏は説明する。

次世代基幹系システム構築は、ハードウェアからネットワークまで、すべて最新鋭のものへと入れ替える一大プロジェクトである。

同時に、債権回収、コンタクトセンタ、カード発行、ホームページ(MyJCB)など、オープンシステム上の周辺業務システムもすべて刷新する。運用管理の環境も完全に入れ替えて、「次世代運用基盤」を新規開発する。

「オープンシステムにおける本格的な統合運用環境の構築については、2002年頃から日立の統合システム運用管理『J P 1』のVersion 6を中心にした総合管理へ進んできましたが、まだ個別の管理ソフトを使っているシステムがあります。次世代運用基盤では、JP1を最新のVersion 8に入れ替えて、統合管理を完成させるとともに、よりハイレベルな管理を実現します」と宮本氏は力強く語る。

「JP1 Version 8」でマルチベンダー環境を統合管理

宮本 憲三 氏の写真
株式会社ジェーシービー
システム本部加盟店システム開発部
インフラ構築グループ担当プロジェクトリーダ
宮本 憲三 氏

次世代運用基盤は、ジョブ管理、ネットワーク管理、アベイラビリティ管理、資産・配布管理、セキュリティ管理、システム操作支援、バックアップなどをJP1で統合的に行い、柔軟かつ効率的な運用を実現していくものだ。

最大の要件は、統合管理である。

運用環境の設計・開発を担当した日立と日鉄日立システムエンジニアリング株式会社は、ネットワーク管理「JP1/Cm2」が監視・収集する情報を、統合コンソール「JP1/IM*1」で集中管理する管理基盤を作り上げた。管理対象は、約20システム、サーバ台数約200台である。

「統合管理によって管理工数を削減できるのはもちろんですが、すべてのシステムから深いレベルのデータを収集できるようになります」と岡本氏は指摘する。

統合管理によってできるようになったことのひとつが、「JP1/Performance Management」を用いての統合的なアベイラビリティ管理である。AIX、HP-UX、Linux、Windows®が混在しているマルチベンダー環境で、サーバのCPU稼働率、ディスク容量、OS・データベース・各種アプリケーションのパフォーマンスを同一基準で監視する。蓄積したデータは、同一の評価軸に沿って表現されているため、中長期的な基盤強化戦略も立てやすい。

問題点を検知したときには、通報管理「JP1/IM*1-TELstaff」との連携によって、システム管理者の携帯電話へメールを自動送信する。その際、メール送信のきっかけとなる障害メッセージは、一定基準で絞り込みを行っている。たとえば、1つのトランザクションが異常終了した場合、後続するトランザクションがすべてエラーとなり、一度に大量の異常通知メールが送信されるという事態があり得る。JP1Version 8では、同じ事象に関するエラーメッセージを1つに絞り込んで通知することができるため、的確な復旧作業を即座に開始できる。

また、最新バージョンへの移行で威力を発揮したのが、ジョブ管理製品の「JP1/AJS2*2-Definition Assistant」である。旧バージョンに登録されている2万にのぼる大量ジョブをMicrosoft® Excelに吸い上げ、まとめて登録できた。新規アプリケーションが次々にカットオーバーしていくときにも、短時間で運用設定が行える。

*1
JP1/Integrated Management
*2
JP1/Automatic Job Management System 2

「JP1」と「BladeSymphony」の相乗効果でシステム全体の可用性向上

運用基盤を更改する際は、ハードウェアとソフトウェアを一体のものとして全体を作り変えたほうが、開発効率が良い。JCBは、JP1の最新バージョンに最適なサーバ環境として、統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony」を採用。BladeSymphonyは、ブレードサーバとストレージ、ネットワークを密接に統合したプラットフォームである。

採用の決め手は次の4点であった。

第1に、対応窓口が一本化され、長期サポートも約束されている。「的確なサポートで物理設計がスピーディにできました」(宮本氏)。

第2に、複数種類のOSを混載できる特長を活かして、資産配布管理「JP1/NETM/DM」を使ったサーバへのプログラム配布を自動運用できた。これまでは、プログラムを配布するときは、夜間にオペレータの立会いが必須となっていた。Windows®サーバからUNIXサーバへプログラムを自動配布すると、アクセス権限が書き換わってしまうなどの問題が生じるので、権限が正しく設定されていることを確認するためだ。次世代運用基盤では、UNIXサーバへの配布はBladeSymphonyのUNIX搭載モジュールから行い、Windows®サーバへの配布はBladeSymphonyのWindows®搭載モジュールから行うため、どちらも立会い不要で自動配布できる。

第3に、将来の性能強化要求に向けた備えとして、サーバモジュール間SMP*3機能によるスケールアップが可能である点を評価した。

そして第4に、JP1とBladeSymphonyは親和性が高く、相乗効果によってシステム全体の可用性を高めることができる。

「複数のサーバモジュールに対して、共通の予備サーバを1台だけ用意しておく『N+1コールドスタンバイ』も魅力的。今後、用を検討していきます」と宮本氏は言葉を添えた。

次世代運用基盤は、2007年2月、社内にリリースされる。約20のシステムは、このプラットフォーム上での開発、テスト、本番移行を次々に行い、2007年度中に完成する予定だ。

運用基盤の刷新により、運用管理者の負荷が軽減され、開発者や業務担当者へ有効なアドバイスをする余裕ができることで、運用設計の充実も期待できる。次世代運用基盤は、システムをパワーアップするだけでなく、人の力も高める基盤へと進化するのである。

*3
Symmetric Multi Processor

JCBの次世代運用基盤の概要
JCBの次世代運用基盤の概要

USER PROFILE

株式会社ジェーシービーのロゴ

株式会社ジェーシービー

[本社] 東京都港区南青山5-1-22 青山ライズスクエア
[設立] 1961年1月25日
[資本金] 66億1,610万円
[従業員数] 2,552名(2006年3月末現在)

世界に5つしかない国際クレジットカードブランドのひとつであるJCB。近年では、従来からの「クレジットカード事業」のみならず、「決済スキーム提供者」や「オペレーションプロバイダー」として、「クレジットカード会社JCB」から「決済総合ソリューション企業JCB」への転換に取り組んでいる。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ 2006年12月25日号」に掲載されたものです。
  • JP1BladeSymphonyの詳細については,ホームページをご覧ください。
  • AIXは、米国における米国International Business Machines Corp.の登録商標です。
  • HP-UXは、米国Hewlett-Packard Companyのオペレーティングシステム の名称です。
  • Linuxは、Linus Torvaldsの米国およびその他の国における登録商標あるいは商標です。
  • Microsoft、Excel、Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標、または登録商標です。
  • UNIXは、X/Open Company Limited が独占的にライセンスしている米国ならびに他の国における登録商標です。
  • その他記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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