証券売買システム
取引所の基幹業務を支える大規模かつミッションクリティカルな
証券売買システムを、オープンプラットフォームで実現。
従来比7倍の高速処理で市場の魅力が高まり、注文数が5割アップ
株式会社大阪証券取引所(以下、大証)は、2006年2月、新売買システムを全面稼働させた。処理速度が飛躍的に向上した新システムは証券各社からの支持を獲得し、稼働開始から2ヵ月で注文数は5割増加(*1)した。証券各社からは、「速さに正直驚いた」「特に0.1秒レベルの勝負をしているデリバティブで、気持ちのいい取引ができる」など、好意的な声が寄せられている。システム構築にあたっては、日立のサービスプラットフォームコンセプトHarmonious Computingに基づく製品群を高度に連携させて、高性能と高信頼を実現。大証は、この柔軟性の高いシステム基盤を活かして、新商品を積極的に投入し、市場としての魅力をより高めていく。
株式会社 大阪証券取引所
システム本部
システム企画グループ グループリーダー
竹本 博一氏
大証は、2006年2月、新売買システムの稼働を開始した。新システムにより、1日あたりの処理性能は、従来の170万件から420万件に、約定件数は120万件から250万件へと2倍にアップ。1秒あたりの処理速度も、これまでの7倍に相当する450件/秒を達成した。
この性能アップの後、大証の注文量は急増を続けている。新売買システム稼働1ヵ月後の2006年3月に1日平均の注文数は3割、2ヵ月後の4月には、5割増加した。処理速度の向上が市場としての魅力を大幅に強め、内外の投資家をひきつけたのである。
従来の売買システムはメインフレームで稼働していたが、すでに構築から15年近くを経て、老朽化が目立っていた。
「個人投資家のネット取引が急増するなかで、より速く、より柔軟にという要求に、もう旧システムでは対応できなかった」と竹本氏は言う。
株式会社 大阪証券取引所
システム本部
調査役
山森 一頼氏
売買システムは、取引所の機能の根幹を成すシステムであり、社会的な責任も重い。1件ごとの扱い額が大きく、システムが停止したり誤った処理を行えば、日本の経済活動全体に深刻な影響を及ぼすことにもなりかねない。
システム構築にあたって日立の提案を採用したのは、その内容が、先進的かつチャレンジングで、投資効果の高いものだったからである。他のベンダーがメインフレームをベースにした再構築の提案を行うなかで、日立は、UNIXサーバをベースにしたオープンプラットフォームの構築を提案。旧システムをしのぐ処理速度と柔軟性を実現し、同時に、メインフレームと同等の信頼性を達成する方策を示した。
「新しいことをやるには必ずリスクが伴います。それでも、取引所としての魅力を高めるためには、チャレンジングなことに挑戦していこうと大証は考えていました。日立の意欲的なオープンシステム提案は、ちょうど大証の思いに合致していたのです」と山森氏は語る。
大証は、メインフレームが処理してきたミッションクリティカルなシステムを、オープンシステムへ移行する決心をしたのである。
新売買システムは、エンタープライズサーバ「EP8000」16台を用い、ディスクアレイサブシステムの最上位機種「SANRISE Universal Storage Platform」10台で20テラバイトの大容量を確保。さらに、ノンストップデータベース「HiRDB」や統合システム運用管理「JP1」をはじめとするミドルウェア製品群を組み合わせて、高性能・拡張性・高信頼性を追求した。
「日立は、ハードウェアやソフトウェアをどのように設定すれば性能を引き出せるのかというところにさまざまな角度からノウハウを注ぎ込み、極限までシステム全体を研ぎすましてくれました。個々の製品もそれぞれ優れているのでしょうが、大証にとっては、システムがトータルで優れた性能を出し、今日に至るまで安定稼働を続けていることを高く評価したい」と山森氏は言う。新売買システムは、システム全体の調和を目指す日立のサービスプラットフォームコンセプトHarmonious Computingを具現化したシステムということができる。
さらなる処理性能向上のために、HiRDBのグローバルバッファ機能、SANRISEのキャッシュ常駐化機能を活用。HiRDBはミッションクリティカルなシステムに多数の導入実績を持つ信頼性の高い並列データベースであり、高度なバッファ管理の機能も備えている。サーバがSQL文を発行すると、サーバ内に常駐させているHiRDBのキャッシュ・バッファ、SANRISEのキャッシュメモリ内を順に探し、そこに目的のデータがないときに初めてSANRISE上のデータベースを検索する。多くの要求は2つのキャッシュ上の処理で完了するため、データベース自体のアクセス性能を大幅に向上させることができた。また、取引処理を複数のサブ業務処理に分割して並行処理したり一括処理するなど、システムプロセス設計にも、高速処理を実現するためのさまざまな工夫を凝らした。
柔軟性・拡張性追求のためには、CUoD(*2)を採用。CUoDは、あらかじめ予備のCPUを搭載しておき、トラフィック増加でCPU増強が必要になったときには、予備CPUを有効化する作業だけで性能が増強できる技術である。
「データは銘柄単位でサーバに分散配置していますので、特定銘柄に処理が集中したときには、CUoDを活かして短時間で銘柄の再配置を行う計画です。急激なトラフィック増に対応できるリソースプールを用意しておくことは、フェアで透明な市場を維持するうえで大切なこと」と竹本氏は説明する。
日立は、高信頼性の実現にも、ハードウェアとソフトウェアの両面から心血を注いだ。
万一障害が発生したときには、HiRDBの機能に加えて、「OpenTP1」、「HAモニタ」、「HA Booster」というミドルウェア製品群の連携により、高速系切替を行い、どの個所で障害が発生した場合でも速やかに復旧できる。
「テスト期間中には、実際にシステムダウンの状況を作って実験しましたが、即座にサービスを再開しました」と山森氏は自信を込めて語る。
大証の新売買システムは、処理性能を旧システムの2倍、処理速度は7倍に向上させる画期的なシステムとなった。
柔軟性の高いシステム環境が整ったことで、新商品・新サービスを積極的に開拓していくことも可能になった。たとえば、流動性が高くハイリターンが望めるが、取引単位が1,000万円以上と高額であるため機関投資家が主な参加者であった「日経225先物取引」に、その10分の1サイズの新商品「日経225mini」も投入する計画である。
システムの性能アップも続く。まず、2006年度上半期をめどに、1日あたりの処理性能を約2倍に増強する。スケーラブルなシステム構造であるため、ハードウェアを追加するだけで、この目標値は達成でできる。
「公正で透明な取引のできるシステム基盤ができました。今後は、このシステム基盤の上に、新たな『大証ブランド』を構築していきたい」と竹本氏は言う。
Harmonious Computingコンセプトに沿って、ハードウェアとソフトウェアの力を最大限に発揮できる日立のオープンプラットフォーム製品群が、今後の大証の成長をしっかりと受け止めていくのだ。
USER PROFILE
●株式会社 大阪証券取引所 ●本社:大阪市中央区北浜1-8-16 ●創業:1878年6月 ●設立:2001年4月1日(株式会社に組織変更) ●資本金:47億2,300万円 ●従業員数:204名 ●URL:www.ose.or.jp ●デリバティブ取引が充実している証券取引所。ベンチャーを中心とした「ヘラクレス」市場(旧ナスダック・ジャパン)に注力。2004年、自らヘラクレスに上場した。株式上場は、日本の証券取引所で初の試み。