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ミドルウェア

uVALUE 実業×IT

Hitachi

ICチップ入り入場券の大規模管理の実証に成功。
2,200万以上の入場と快適な観覧予約を支えた日立のオープンミドルウェアと総合力

21世紀初の本格的な国際博覧会となった「愛・地球博(正式名称:2005年日本国際博覧会)」。2005年3月25日から9月25日まで半年の間に2,200万以上の来場者を迎え好評の内に幕を閉じた。愛・地球博では、日立が提唱するサービスプラットフォームコンセプトHarmonious Computingに基づく「HiRDB」、「OpenTP1」、「JP1」、「Cosminexus」、などのミドルウェア製品を採用し、堅牢で信頼性の高いシステムを作り上げた。この中でも特長的だったのは、超小型無線自動認識ICチップ『ミューチップ』を埋め込んだミューチップ入場券と連携した入場管理と観覧予約のシステムだ。パビリオンやイベントの観覧予約など、ユニークなサービスを提供してユビキタス情報社会の到来を予感させたのである。

ユビキタス情報社会の可能性を感じさせたICチップ入りの入場券

杉戸雅典氏の写真
財団法人
2005年
日本国際博覧会協会
営業管理室
室長
杉戸雅典氏

片山聖教氏の写真
財団法人
2005年
日本国際博覧会協会
営業管理室
担当課長
片山聖教氏

「万博は、その時点での最高の人間の知恵と、その時点での最新の技術を一堂に会して、次の時代の方向性を指し示すところに意義があります」と杉戸氏は語る。

「Nature's Wisdom(自然の叡智)」をテーマに開催された「愛・地球博」でも、人にやさしいロボットや緑化壁による空調などが登場して、21世紀に不可欠な技術基盤としてさらに進化していくことを感じさせた。

入場券システムでも、ユビキタス情報社会の実現に向けて斬新な試みが行われた。

日立の開発した0.4mm角の『ミューチップ』を入場券に埋め込み、R F I D( R a d i oFrequency-Identification:無線自動認識)技術を用いて入場管理する「ミューチップ入場券」を作ったのである。

ミューチップ入場券は、製造時にID番号をROMに記録するため、流通段階での偽造や改ざんの防止に有効だ。しかも、入場券を個別に認識できるため、多彩なサービスの提供が可能になる。

「世界最高水準の偽造防止システムを安価に実現できることと、これまでにないサービス提供へといろいろ展開できる点が、ミューチップ入場券のおもしろいところ。万博においてこの技術を用いるのは初めての経験ですが、来場者に快適な観覧をして頂くためにチャレンジしていこうと思いました」と片山氏は言う。

ミューチップ入場券だからこそ実施できたのが、パビリオンやイベントの観覧予約である。インターネットや携帯電話で事前予約をしたり、会場で当日予約をすることで、人気パビリオンにも待たずに入れる。

混雑時の入場制限もタイムリーにできた。会場を出た人数だけ入場させることがリアルタイムにできるため、1日に28万人が殺到したピーク時にも会場内に大きな混乱は起きなかった。

エコマネー、スタンプラリーなどのサービスでもミューチップ入場券は活躍した。日立グループ館などでは、会場で撮影した自分の写真を後日インターネットでダウンロードできるなど、ミューチップ入場券による個人認証を最大限に活用したサービスを提供して話題を集めた。

日立のIT総合力で高信頼・高性能なシステムを実現

原澤広志氏の写真
KDDI株式会社
愛知プロジェクト室
課長
原澤広志氏

入場券システムと当日観覧予約システムに求められる要件は、信頼性、リアルタイム処理能力、規模への対応である。たとえば入場券システムは、ピーク時には1日28万人が通過する改札ゲートを制御している。ひとたびトラブルが起きれば、大混乱を招く危険があるのだ。

日立は、ミューチップ入場券や改札ゲート、会場内に設置した当日予約端末などのハードウェア機器から、システムのサーバ、ストレージ、ソフトウェアまで総合的に開発し、堅牢で信頼性の高いシステムを作り上げた。特に入場券システムと当日観覧予約システムでは、ノンストップデータベース「HiRDB」、分散トランザクションマネージャ「OpenTP1」などのミドルウェアにより、処理性能の向上と規模への対応を実現している。

改札機がミューチップ入場券を読み取ると、管理サーバに搭載したHiRDBにアクセスして2,500万件を越える入場券情報を照合して、入場を許可して良いかを判断しゲートを開く。システム間のやりとり自体は0.1秒で行われ、2秒以内でゲート開閉を実現している。

当日観覧予約システムも、渋滞させないことを目標に細部まで作りこんだ。

「誰でもわかりやすく操作できるように、当日予約端末のアプリケーションは検証を重ね、何度もブラッシュアップしました。もちろん、システムのレスポンス向上にも努めました。その結果、『人気パビリオンを並ばずに観ることができて満足』、『時間を有効に使って効率よく回れた』など、多くの来場者から好評をいただきました。観覧予約システムを提供したことは、開催期間中に何度も来場するリピーターの増加にも貢献したと思います」とKDDIの原澤氏は語る。KDDIはジョイントベンチャーの1社として、愛・地球博のインフラづくりに取り組んだ。そのひとつとして、1,000万規模の博覧会で初めての試みとなった「観覧予約システム」を構築したのである。

当日予約端末に入場券をかざすと、当日に改札ゲートを通った人だけが認証され、当日観覧予約が1回できるしくみである。バックエンドでは、入場券システムのデータベースと同期をとった当日観覧予約データベースが稼働しており、これもHiRDB、OpenTP1と日立のCOBOLの連携で1秒以内のレスポンスを実現し「待たせない当日観覧予約」を印象づけたのである。

来場者の急増にも応えたHiRDBの信頼性とサポート

ミューチップの写真
0.4mm角のミューチップを埋め込んだ「ミューチップ入場券」

HiRDBを採用したのは、入場券システムと当日観覧予約システムが、大量のリアルタイムなアクセスに応えられ、かつ止まってはならないシステムだからである。信頼性と性能、拡張性こそは、HiRDBの身上だ。

また、HiRDBは、日立が国内開発したデータベースである。万一問題が発生したときには、データベースのソースレベルまで熟知している開発者が現場へ急行して即応できる。

「35年前の大阪万博の経験者は、システム部門には皆無。手探りで『規模』という課題と戦っていくなかで、データベースを作った開発者がそばにいて顔が見えるということは大きな安心につながりました。また、データベースだけでなくミドルウェアすべてを日立が自社開発していて、システム全体について確実に問い合わせることができるというメリットも大きかった」と原澤氏は言う。

しかも来場者数は1,500万人という当初の予想を超え、途中から爆発的に増加した。想像を超えた来場者の急増にも安定して対応できたのは、HiRDBをはじめとした日立のミドルウェアの信頼性の証明ともいえるだろう。

「ミューチップ入場券による入場管理と観覧予約システムは、会期中、止まることなく2,200万以上の来場者に利便性を提供し続けました。壮大な実証実験ともいえるこの成功によって、わたしたちは新しい時代へ進むことができるのです」と杉戸氏は意欲的に語った。

入場券・観覧予約システム概要
入場券・観覧予約システム概要

USER PROFILE (2005年3月31日現在)

2005年日本国際博覧会(愛・地球博)

[開催場所] 愛知県名古屋東部丘陵(長久手町・豊田市、瀬戸市)
[開催期間] 2005年3月25日〜9月25日
[来場者数] 2,204万9,544人


「Nature's Wisdom(自然の叡智)」をテーマに開催された21世紀最初の国際博覧会。会場内で出たごみを発電に利用し、有害物質を排出しない燃料電池ハイブリッドバスを運行するなど、自然との共生を実現しようというメッセージを発信した。

特記事項

  • この記事は、「日経情報ストラテジー」2006年1月号に掲載されたものです。
  • その他記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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