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2018年5月31日
動作習得に必要な期間の大幅短縮と動作バリエーションの飛躍的な増大を実現
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、プログラミングが不要かつ簡単な手順で複雑な動作を習得することができる学習・成長型ロボットの実現をめざし、深層学習を用いたロボット制御技術の新しいアプローチとして、状況に応じ、学習済みの複数の動作を自律的に組み合わせてロボット全身の制御を行う深層学習(ディープラーニング)*1技術を開発しました。本技術では、ロボットを人が操作した際の動作を教示データとして学習させ、動作データベースに蓄積した学習済み動作の中から必要な動作を組み合わせることができます。これにより、動作習得に必要な期間が大幅に短縮するとともに動作バリエーションが飛躍的に増大することで、人の生活空間で活躍するサービスロボットや生産現場で働く熟練作業を行うロボットなど、多様な環境下で複雑な作業を支援するロボットの実現が可能となります。
現在、少子高齢化による労働力不足解消のため、人の作業支援を行うロボットの普及が期待されています。しかし、従来は、人が行っている様々な環境での複雑な作業をロボットで実現するには、専門的知識が必要とされる複雑な開発工程の下で膨大な量のプログラミングを行う必要でした。そこで日立は、プログラミングが不要で、かつ、簡単な手順で動作が習得できる深層学習を用いたロボットの自律制御技術の開発に着手しました。これまでは、「物をつかむ」「移動する」といった個別動作を実現する深層学習技術の開発に取り組んできましたが、人が行っているような上肢(手作業)と下肢(移動)が連携した全身動作や複雑な動作手順が要求される複雑作業をロボットで実現するためには、別々に習得した動作を自由に組み合わせる技術が必要でした。
今回、日立は、経験として蓄積した動作を組み合わせて実行する人の処理から着想し、ロボットが置かれている状況が学習済みか否かを判断し、学習済みの場合には動作を自律的に実行する技術と、動作手順が要求される複雑な作業でも動作を適切に組み合わせることが可能な動作組み合わせ技術を開発しました。これにより、動作習得に必要な期間を数カ月から数日へと大幅に短縮すると同時に、動作バリエーションの飛躍的な増大を実現しました。開発した技術の概要は以下の通りです。
本技術では、ロボットに搭載されているカメラへの入力画像の特徴量を学習・記憶します。記憶済み画像であれば元の画像を想起(再構成)することが可能な深層学習モデルを用い、現在のロボットの入力画像と深層学習モデルの想起画像の差が小さい(学習経験がある既知の状況=経験値が高い)場合に、その画像を記憶している学習済み動作を自律的に実行する技術を開発しました。
複雑な動作を実現するには、自律的に実行される動作を適切な手順で組み合わせて実行する必要があります。別々に学習した複数の動作の組み合わせ方法として、ある動作の完了後に別の動作を実行する「直列実行」、複数候補の動作の中から経験値の高い動作のみを実行する「排他的実行」、複数動作を並列に実行する「並列実行」の3つのケースを指定することが可能な技術を開発しました。これにより、複雑な手順が要求される複数動作の自由な組み合わせが可能になりました。
開発技術を検証するため、まず、ドアへの接近動作、ドア開け動作、ドア通過動作を個別に学習し、この学習済み動作の組み合わせにより、動作手順が要求されかつ移動を伴う全身動作が必要な「ドア開け通過動作」が実現できることを、実際にロボットを動作させて確認しました。
今回開発した基盤技術は、人の生活支援を行うロボットや組み立て作業を行うロボットなど、幅広い応用が可能であり、日立は、今後、信頼性向上や機能向上等の開発を進め、実用化を推進していきます。
なお、本成果の一部は、早稲田大学尾形哲也研究室との共同研究にて開発したものであり、北九州市で開催される「日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会2018(ROBOMECH2018)」にて2018年6月3日(設立30周年記念特別行事)および4日(ポスターセッション)に発表を行う予定です。
株式会社日立製作所 研究開発グループ
以上