このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。
2015年3月31日
国立大学法人東京大学大学院情報学環
日本電信電話株式会社
株式会社KDDI研究所
株式会社日立製作所
日本電気株式会社
富士通株式会社
〜日米欧連携強化で新世代ネットワーク技術の実用化に向けた研究開発を加速〜
国立大学法人東京大学大学院情報学環(情報学環長:須藤 修/以下、東京大学情報学環)、日本電信電話株式会社(代表取締役社長:鵜浦 博夫/以下、NTT)、株式会社KDDI研究所(代表取締役所長:中島 康之/以下、KDDI研)、株式会社日立製作所(代表執行役 執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)、日本電気株式会社(代表取締役 執行役員社長:遠藤 信博/以下、NEC)及び富士通株式会社(代表取締役社長:山本 正已/以下、富士通)は、米国ユタ大学(The University of Utah、ソルトレイクシティ市)の協力を得て、独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT)がJGN-X*1上で運用するネットワーク仮想化テストベッド*2と米国科学財団(以下、NSF)が推進するGENI*3テストベッドの一つであるProtoGENI*4、欧州テストベッドの一つであるFed4FIRE*5とを相互接続した広域仮想網「日米欧ネットワーク仮想化*6テストベッド」を用いて、グローバルなマルチドメイン環境でソフトウェアによってプログラマブルに制御できる新たな仮想網の構築および新世代ネットワークアプリケーション実験に成功しました。
今回のグローバルなネットワーク仮想化テストベッドの相互接続および新世代ネットワークアプリケーション実験の成果により、従来のインターネットでは実現することのできなかった新しいネットワークサービスに関する新世代ネットワーク技術*7の実用化に向けた研究開発の加速が期待されます。
なお、本成果は、NICTの委託研究「新世代ネットワークを支えるネットワーク仮想化基盤技術の研究開発」の一環によるものです。
近年、次世代ネットワークとして、ソフトウェアによってプログラマブルに仮想的なネットワークを実現するSDN(Software-Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)の研究開発が盛んに行われています。SDNやNFVを実現する技術の一つであるネットワーク仮想化技術では、ネットワークの構成や機能をソフトウェアにて実現することにより、キャリアネットワークにおいて提供するサービスを柔軟かつ迅速に構成することができる大きなメリットがあります。そのため東京大学情報学環、NTT、KDDI研、日立、NEC、富士通は、NICTの委託研究「新世代ネットワークを支えるネットワーク仮想化基盤技術の研究開発」を共同で進めており、JGN-X上でのネットワーク仮想化技術を用いたテストベッド(ネットワーク仮想化テストベッド)運用を開始しています。
一方、このようなネットワーク仮想化テストベッドは日本国内だけでなく、北米のProtoGENIや欧州のFed4FIREなど国外でも盛んに研究開発がすすめられています。グローバルな仮想ネットワークの実現に向けて、JGN-X上のネットワーク仮想化テストベッドと米国ProtoGENIネットワーク仮想化テストベッドの相互接続を進めてきました[1]が、さらに広域なグローバルネットワーク仮想化テストベッドの構築と、ネットワーク仮想化技術を生かした新世代ネットワークアプリケーションによる新たなネットワークサービスの創出が課題でした。
[1] 「世界初、プログラマブルな高機能仮想網を日米間でのマルチドメイン環境で実現」
http://www.ntt.co.jp/news2013/1307/130718a.html
今回、NICTと共同研究を結ぶ米国ユタ大学のキャンパス内に設置されたネットワーク仮想化テストベッドを構成する装置(仮想化ノード*8)を用いて、ProtoGENIに加えてFed4FIREとの相互接続を行い、日米欧にまたがるグローバルなマルチドメイン網をプログラマブルに制御することに成功(実験①)するとともに、5つの新世代ネットワークアプリケーション実験に成功(実験②〜⑥)しました。
実施組織 | 実験名称 | 実施内容 |
---|---|---|
KDDI研 日立 東京大学 |
①日米欧3大陸スライス*9相互接続 (スライス・エクスチェンジ) |
スライス・エクスチェンジ・ポイント(SEP*10)を介して、日米欧のネットワーク仮想化基盤間で資源情報や制御情報を交換する技術の検証 |
NTT | ②グローバルマルチドメイン環境での次世代映像配信実験 | 端末やネットワークの状況に応じて映像の圧縮やマルチキャストをネットワーク上で自動に行う次世代映像配信技術を日米間のスライス上にて検証 |
東京大学 | ③アプリケーション特化QoS制御 | 端末トラフィックのアプリケーションを識別して、アプリケーションごとにスライス収容しQoS制御及びトラフィックエンジニアリングをする技術を開発 |
日立 | ④IPON:IP アドレスによるスイッチング実験 | アドレスが冗長となっているIP/Ethernetプロトコルの短所を解消するためWAN, LAN で同一のアドレス (IP アドレス) を使用する新プロトコル IPON(IP over Null)を開発しネットワーク仮想化テストベッド上のスライスにて動作を検証 |
NEC | ⑤スライス内でのIPS*11による通信制御実験 | 1Gbpsを超える通信トラフィック環境において、クライアントからの動画ストリーミングアクセスに対して、ソフトウェアベースIPSとvOFS*12との組み合わせによるトラフィック識別と経路制御を仮想化テストベッド上のスライスで検証 |
富士通 | ⑥ユーザ移動先を追随するデータ配置機能による応答性能の向上実験 | ユーザの位置を検知して、データをユーザ近傍の仮想化ノードに事前に配置することで、応答性能の向上を図る技術の検証 |
複数のネットワーク仮想化基盤を相互に接続するSEPをKDDI研と日立が開発し、3大陸(北米:ProtoGENI、欧州:Fed4FIRE、日本:JGN-X)を跨がるスライス・エクスチェンジを可能にし、世界規模のスライスの即時構築に成功しました。この結果、将来のインターネット利用者に対して、世界規模に跨がる3つのスライスの継ぎ目を感じさせない接続性や利便性を提供できる可能性を実証しました。
相互接続された日米間のスライスにて、NTTが中心となり端末やネットワークの状況に応じて映像の圧縮やマルチキャスト機能を仮想ネットワーク上に自動配備する次世代映像配信技術の実証実験を行いました。これは映像視聴端末の増加に応じて自動的にマルチキャスト機能をネットワークに配備したり、トラフィックが混んでいる状況に応じて自動的に映像圧縮機能をネットワークに配備することにより、映像配信サーバやネットワークの負荷を減らすとともに、サービスの中断を最小限にした映像配信サービスを可能とします。今回はJGN-Xにある仮想化ノードと米国ProtoGENIテストベッド内のノードそれぞれに映像圧縮機能とマルチキャスト機能を自動配備し、端末やトラフィックの状況に応じて映像圧縮やマルチキャスト機能が自動的にON/OFFされることを確認しています。
端末からのパケットに対し、端末デバイス内でユーザが使用しているアプリケーション識別タグを自動的に付加する仕組みを東京大学が中心になって開発し、その識別タグをネットワーク仮想化ノードで検出し、アプリケーションごとに仮想化スライスに収容するネットワーク・アーキテクチャを実現しました。本機能をネットワーク仮想化ノードのスライスに適用し、各スライスでアプリケーションに応じて、QoS制御やトラフィック・エンジニアリングがSDNのフレームワークを使用して実現できることを実証しました。
ネットワーク仮想化テストベッド上のスライスにてIPONプロトコルで動作するスイッチからなるIPONネットワークを構成し、そのネットワークに接続した仮想端末間でのIP通信実験を成功させました。IPONプロトコルは冗長なアドレスをIPアドレスに統一するだけでなく、Ethernetとは異なりループ(冗長性)のあるネットワークでも正常に動作することを確認しました。また、IPONスイッチはネットワーク仮想化テストベッド内にある機能を使用して実現したもの、およびネットワーク仮想化テストベッドの機能を拡張するためのハードウェアとソフトウェアからなるプラグイン・アーキテクチャを使用して実現したもの双方を使用し、共に正常動作を確認しました。
ネットワークのプログラマビリティの検証のために、JGN-X上の仮想化テストベッドにてスライスを作成し、そのスライス内で1Gbpsを超える通信トラフィック環境において、クライアントからの動画ストリーミングアクセスに対する、ソフトウェアベースIPSと仮想OpenFlowスイッチvOFSによる経路制御の実証実験を行ないました。
今回は動画ストリーミングサービスへのアクセスに対して経路制御を実施しています。ソフトウェアベースのIPSにてURL中の文字列をチェックして正常なアクセスであるか否かを判断し、判断情報を基にして正常であれば正しいコンテンツサーバへ接続し、不正アクセスの場合は別コンテンツを提供するサーバへ接続するよう、vOFSにより経路制御を実施します。さらに、IPSによって判定済みのトラフィックについては、それ以降IPSを経由しないような経路制御も実施します。今回の実証実験により、Gbpsレベルの通信トラフィック環境において、IPSとvOFSとの組み合わせによるトラフィック識別と経路制御が正しく行われ、正常な場合に問題無く動画ストリーミング再生ができることを確認しました。
ユーザの位置を検知して、ユーザが利用するデータをユーザの近くの仮想化ノードに事前配置することで、ユーザアクセスの応答性能の向上を図る技術の検証実験を行いました。
実験では、JGN-X上の仮想化ノードを使って、通信キャリアの無線アクセスポイント、エッジノードおよびコアノードを模擬したネットワーク環境を構築し、ユーザのモバイル端末が無線アクセスポイント間を移動するケースを想定した実験を行いました。各仮想化ノードには、“ユーザ移動先の検出"と“移動先を追随してデータ再配置"を行う通信制御アプリケーションを配備しました。この通信アプリケーションの連携により、ユーザが移動した場合に移動先の仮想化ノードを検出し、ユーザに近い仮想化ノードにすばやくデータを移動・配置することができ、ユーザがデータにアクセスできることを確認しました。
なお、これらの成果は、2015年3月16日〜17日に電子情報通信学会主催のネットワーク仮想化研究会[会場:NICT小金井]および2015年3月24日16:30(米国現地時間)にGENI主催のネットワーク仮想化テストベッドに関する研究者向けカンファレンスGEC22(The 22th GENI Engineering Conference)[会場:米国ジョージワシントン大(ワシントンDC)]において、デモンストレーションにて紹介しました。
2015年3月までの委託研究期間において、先進的ネットワーク仮想化基盤技術の確立を達成しました。今後は更なる広域なグローバル相互接続実験および高度な次世代ネットワークアプリケーション実験について関係組織の連携のもと研究開発に取り組んでいくとともに、標準化を通してSDN/NFV技術への貢献を行っていきます。
以上