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企業情報ニュースリリース

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2015年2月24日

IT装置向け高速データ伝送を実現する送受信器の試作に成功

IEEE規格を超える信号損失40dB(デシベル)での25Gb/s(ギガビット/秒)データ伝送を実現

[画像]図1 IT装置内のデータ伝送経路と送受信器の例

  株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、ストレージやサーバなどのIT装置内において、プリント基板の配線を利用してLSIチップ間を高速でデータ伝送できる送受信器の試作に成功しました。本送受信器には、信号損失が最大40dB*1となる条件において、劣化した信号を高精度に復元し、25Gb/sでデータ伝送を行うことを可能とする信号再生回路(Decision Feedback Equalizer/以下、DFE)を搭載しています。本機能によりIT装置内において複数のプリント基板を跨ぐ信号損失が大きな配線においても、25Gb/sで伝送された信号の誤り率(ビットエラーレート)が10-14以下*2となる高速かつ高品質なデータ伝送が可能となることを確認しました。
  IT装置内のデータ伝送に関わるイーサネットの標準規格IEEE802.3bj*3では、信号損失35dBで25Gb/sのデータ伝送を規定していますが、本送受信器は規格を上回る性能を得ています。本送受信器はIT装置間のデータ伝送にも適用可能であり、次世代の高性能IT装置を実現するキー技術となります。

  近年、企業や社会活動で発生するデータは爆発的に増加しており、さまざまな分野において発生するデータを分析し、新たなビジネスやサービスを創出する動きが加速しています。この膨大な情報処理に対応するため、IT装置では信号線1本あたりのデータ伝送速度を従来の10Gb/sから25Gb/sへの高速化対応が進められていますが、一方で配線の表皮効果*4や基板の誘電損失*5による信号損失が増大するという課題が発生しています。
  さらにIT装置内において複数のプリント基板を跨いでデータ伝送を行う場合には、プリント基板同士をつなぐコネクタ部の不連続性等による信号損失が発生するため、トータルの信号損失がイーサネットの標準規格IEEE802.3bjで規定された信号損失35dBを上回る値となります。信号損失を補うために、DFEを搭載した送受信器が使用されていますが、25Gb/sデータ伝送では複数のプリント基板を跨いだデータ伝送には対応できないという課題がありました。

  そこで、日立はこれらの課題に対応可能なDFEを搭載した送受信器を試作しました。DFEは、帰還(参照)するデータ数が多いほどデータ復元性能は高まるものの、時間精度が劣化することにより逆にデータの復元能力が低下するため、従来は最長でも15データ分の帰還(参照)に留まっていました。今回試作したDFEは帰還する過去データを従来の15データから36データに拡大しながらも、ランダムなデータ列の中から時間精度が高く帰還(参照)できるデータパターンのみを選択することで、大きな信号損失の発生に対しても対応が可能となりました。さらに試作した本送受信器を用いて25Gb/sのデータ伝送での伝送実験を行ったところ、IT装置への適用に必要な40dBの信号損失を持つ伝送路においても、信号の誤り率(ビットエラーレート)10-14以下という高品質な信号伝送に成功しました。

  なお、今回試作した送受信器では、クロック発生器の内部電圧をデータ伝送速度に応じて自動制御することで、さまざまなデータ伝送速度を持つ通信規格に対応*6しています。

  今後は本送受信器をストレージ、サーバなどのIT装置に組み入れ、ビックデータ解析等に対応可能な100Gb/sのインターフェースを備えたIT装置の製品化と、次々世代の伝送速度である400Gb/sのデータ伝送をめざします。

  本成果の一部は、2015年2月22日〜26日まで、米国サンフランシスコで開催される国際固体素子回路会議(ISSCC2015:International Solid State Circuits Conference)で発表します。

*1
信号損失が最大40dB:基板を通ることによる信号振幅の信号周波数での減少分。dBはLog換算された振幅比で、20Log(真数)となる。信号損失40dBは、バックプレーンなどの伝送路を信号が通ることにより、信号周波数での送信振幅が受信時に1/100になることを意味する。
*2
信号の誤り率(ビットエラーレート)が10-14以下:伝送品質を表す指標の一つ。ビットエラーレートはエラー数/送信データ数で与えられる。IEEE802.3bjにおける100GBASE-KR4規格では、ビットエラーレートは10-12以下であることが規定されている。
*3
イーサネットの標準規格IEEE802.3bj:イーサネットはデータ転送方式の一つで、一般的に最も使用されている技術規格。IEEEは、The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略。米国に本部を置く電気・電子技術の学会。イーサネットの標準規格IEEE802.3bjとは、100Gb/sを伝送する規格で、1レーンで25Gb/sの伝送を行い4レーンで100Gb/sを実現する方式。
*4
表皮効果:周波数が高くなると導体の表面近くにしか電流が流れなくなり、抵抗が増加する現象。
*5
誘電損失:周波数が高くなると基板を構成する誘電体が周波数に追随できず、伝送エネルギーの一部を熱として放出する現象。
*6
さまざまなデータ伝送速度を持つ通信規格に対応:オフィスや広域網などで使われるイーサネットでは信号線4本データ伝送(4本×25Gbp/s)を行う100GbEや、40GbE、25GbE、10GbE、1GbE等の標準規格に対応している。また、ストレージネットワークなどに用いられるFibre Channel(ストレージネットワークを対象としたギガビット級のネットワーク標準規格)においては32GFC、16GFC、8GFC等の標準規格に対応している。

他社商標注記

  • イーサネットは、富士ゼロックス株式会社の登録商標です。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 情報企画部 [担当:木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 042-323-1111(代表)

以上

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