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2015年2月9日
株式会社日立ハイテクノロジーズ
株式会社日立製作所
集団の幸福感の向上により組織生産性の向上に貢献
株式会社日立ハイテクノロジーズ(執行役社長:久田 眞佐男/以下、日立ハイテク)は、人間行動データを取得、解析し、組織生産性に強く相関する「組織活性度」を計測できる新ウエアラブルセンサを開発しました。本製品は、株式会社日立製作所(執行役社長COO:東原 敏昭/以下、日立)が開発した、集団の幸福感を身体運動の特徴パターンから「ハピネス度」として定量化する技術を活用したものです。
図1「新ウエアラブルセンサ」写真
幸福の向上は社会の最も重要な課題の一つであり、最近では、内閣府が「主観的幸福感」を中心とする国としての幸福度指標を検討しており*1、文部科学省が「ハピネス社会の実現」をめざす研究プログラム*2を推進しています。さらに、最近の研究では、人の幸福感は組織の生産性に大きく影響することが報告されています*3。しかし、これまで幸福感や組織の活力を定量化するには、自己申告に基づく質問紙(アンケート)に頼らざるを得ませんでした。このため、企業組織においては、経営施策や職場環境などが従業員の幸福感や活力にどのように影響しているか、リアルタイムに定量化し、客観的に評価することは困難でした。
日立ハイテクが開発した「組織活性度」測定機能搭載の新ウエアラブルセンサは、人間行動データを取得し、個人の活性度*4を演算後、組織で集計・平均することで、「組織活性度」の定量化を実現した製品です。「組織活性度」を定量化することで、業務改善や生産性向上などを支援することができます。これは、日立が考案した身体運動の特徴パターンから集団の幸福感を定量的に求める予測モデルを活用したことにより、実現したものです。
日立が考案した集団の幸福感を定量的に求める予測モデルは、ウエアラブルセンサで得られた大量の人間行動データの分析から、集団の幸福感と強い相関がある身体運動の特徴パターンを見出したもので、「ハピネス度」として定量化しました。さらに、定量化された幸福感は、その組織の生産性に強い相関があることを突き止めました。
日立ハイテクは、これら条件を用いて新ウエアラブルセンサを開発し、従来客観的な評価が困難であった企業の経営施策や職場環境の有効性を、効率的かつ客観的に評価することを可能としました。ユーザーは、本製品を活用したサービスを新たな経営支援ツールとして活用できます。
今後、日立ハイテクでは、これまでに展開している「ヒューマンビッグデータ/クラウドサービス」*5の新たなソリューションとして、本製品を活用したサービスをさまざまな分野へ提供していきます。
また、日立は本技術を活用し、幅広い事業分野で、顧客企業の業績向上や地域住民の幸福向上に向けた施策を支援していきます。
日立ハイテクが開発した新ウエアラブルセンサには、人間行動データ取得機能に加え、個人の活性度の演算機能を搭載しました。個人の身体運動の特徴パターンを取得し、個人の活性度を演算後、組織の複数人で集計・平均することで、「組織活性度」が得られます。また新ウエアラブルセンサの液晶画面には、行動継続時間や個人の活性度トレンドが表示され、装着者はリアルタイムに個人の活性度を確認することができます。
日ごとの「組織活性度」の変動の推移は、クラウドサービス上で提供され、ウェブブラウザで確認することができます。さらに、この期間のユーザーの身体運動などセンサで取得されたデータの一部はウェブからダウンロードすることができます。このデータをExcelなどで読み込むことで、組織生産性の向上に相関のある行動の抽出が可能となり、プロジェクトマネジメント、研究開発マネジメント、組織統合マネジメント、コールセンタ・物流センタ・流通店舗などのサービス業務の生産性向上、顧客満足度向上に活用することができます。
日立では、2004年から人間行動の客観計測技術の研究開発に取り組み、加速度センサ、対面センサが搭載された名札型のウエアラブルセンサ(「ビジネス顕微鏡」)で得た大量の人間行動データを解析することで組織状態の把握や企業の業績向上策を見出す手法を開発してきました*6。今回、7社、10組織、468人の従業員の業務中の延べ約5,000人日、50億点の身体運動を表す加速度データをウエアラブルセンサで取得し、集団の「ハピネス度」を示すデータとの相関解析を行いました。加速度データについては、身体運動の持続時間に着目し、集団のハピネスとの相関を調べました。集団の「ハピネス度」には、米国国立精神保健研究所により開発され、世界中で普及している抑うつ傾向の自己評価尺度CES-D*7を元に算出したデータを用いました。これを集団(組織)ごとに集計し、その集団における身体運動持続時間の頻度分布との関係をみていくと、高ハピネスの集団では、持続時間の頻度分布が、富士山のように曲線を描きながら裾野が長く伸びる(富士山型)のに対し、低ハピネスの集団では直線的に低下している(絶壁型)ことが明らかになりました。
図2 集団における身体運動継続時間と「ハピネス度」
「ハピネス度」の高低によってあらわれる富士山型、絶壁型の2つの身体運動パターンを利用してウエアラブルセンサで得られた集団の加速度データからCES-Dによって算出される集団の「ハピネス度」を予測するモデルを考案しました。これを実データに適用したところ、ウエアラブルセンサで得られた集団の行動データから、高い精度で集団の「ハピネス度」を予測できることを確認しました*8。
ウエアラブルセンサで求められる集団の「ハピネス度」は、業務の生産性と強く相関することを見出しました。コールセンタ2拠点で勤務する215人の従業員にウエアラブルセンサを29日間(延べ6,235人日、約60億点のデータを計測)装着してもらったところ、集団の「ハピネス度」が平均以上の場合(拠点・日)は平均以下の場合に比べ、日毎の受注率が34%高いことがわかりました*9。さらに、4つの研究開発プロジェクト(4分野、85人、延べ17,000人日、約170億点のデータを計測)のプロジェクト開始2ヶ月間の集団の「ハピネス度」が、この研究による5年後の事業の売り上げを予測(相関係数0.99)することがわかりました。これは、「ハピネス度」が集団の生産性を表すことに加え、組織運営のツールとしての有用性を示すものです。
なお、本技術については、2015年2月10日発行の『ハーバード・ビジネス・レビュー』3月号(日本語版、ダイヤモンド社)にて発表される予定です。
株式会社日立ハイテクノロジーズ 新事業創生本部
プロジェクトマネジメントセンター ソシオインフォプロジェクト [担当:一関、石橋]
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以上