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2014年1月9日
株式会社日立製作所
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
学校法人北里研究所
透過X線の位相検出にX線干渉計を用いて高感度化
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 : 鈴木 厚人/以下、KEK)および学校法人北里研究所(理事長 : 藤井 清孝/ 以下、北里大学)は共同で、金属膜を透過するX線(放射光)の吸収量とともに位相の変化をX線干渉計によって測定し、金属の実効原子番号を観察するX線イメージング法を開発しました。本方式で、アルミ、銅、鉄、亜鉛の単一元素からなる材料を観察したところ、誤差5%以内で元素を特定できることを実証しました。本計測技術は、大気中で数十ミリメートル領域を数十ミクロンの空間分解能で一括に観察できることから、磁石新素材やインフラ構造部材における元素分布の新たな評価技術として期待されます。
X線が物質を透過する際に密度の高い領域ほど吸収されることを利用して、レントゲンのように被写体内部の密度分布を画像化する技術が実用化されています。また、近年では被写体の密度変化をさらに高い感度で知る方法として、被写体を透過するX線の位相の変化を調べるX線位相イメージング法が研究されています。位相とは、X線を波としてみた場合の、その波における山や谷の位置のことで、透過するX線の吸収による強度の変化に比べて1000倍以上敏感に変化するために、吸収の小さい生体組織や有機材料の観察手段として注目されています。しかし、感度が高いとは言え、この方法で観察できるのは物質の密度であり、原子の種類を知ることはできません。しかし、2010年にX線の位相と吸収の変化を同時に測定することで得られる両者の比により、測定部分の平均的な原子番号(実効原子番号)が特定可能であるという論文が発表されました。この技術の適用範囲を金属まで拡大できれば、大気中で広い領域(KEKの放射光施設フォトンファクトリーBL-14Cで数十ミリメートル角)を数十ミクロンの分解能で計測できるため、磁石材料やインフラ構造部材などを一括で観察することが可能となります。
このような観点から今回、日立、KEKおよび北里大学は共同で、金属の観察まで適用できる高いエネルギーの放射光を用いたX線イメージング法を開発し、誤差5%以内の精度で実効原子番号を計測できることを実証しました。開発技術の内容は以下の通りです。
開発した技術で錆びた鉄を測定したところ、酸化により錆が進行している部分では実効原子番号が小さくなっていることを検証しました。これは、酸化により元素番号の小さい酸素(元素番号8)の割合が、鉄(元素番号26)に比べて増加したことによるものであり、この検証により本イメージング法では酸化など元素組成の変化も簡便に可視化できることが確認できました。
開発した技術は、大きなエネルギー領域での放射光の特長を利用し、大気中で数十ミリメートルの広い範囲を測定できること、また数十ミクロンの空間分解能で、被写体となる材料の実効原子番号を特定できることから、新たな磁石新素材やインフラ構造部材の観察技術として期待されます。
なお、本成果は、2014年1月11日から広島国際会議場(広島県)で開催される「第27回日本放射光学会年会」で発表する予定です。
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