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300mSv/hの高線量率環境下で
ガンマ線強度分布を測定可能なガンマカメラを開発
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長 : 古川 一夫/以下、NEDO)の「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト/計測・作業要素技術の開発」により、300mSv/h*1の高線量率環境下でガンマ線*2強度分布を測定可能なガンマカメラを開発しました。
日立は2011年7月に、日立GEニュークリア・エナジー株式会社(代表取締役 取締役社長 : 魚住 弘人)と共同で、原子力発電所内外における15mSv/hまでの線量率環境下で、核種*3毎のガンマ線強度分布を色分けして確認できるガンマカメラを開発し、福島第一原子力発電所での建屋内調査への活用を進めてきました。2012年2月からはNEDOのプロジェクトに参画し、原子力建屋内の全ての領域において調査を行うために必要な、より高線量率環境下での測定に対応可能なガンマカメラの開発を進めています。今回日立は、信号処理機能の一部をハードウェアへ組み込むと共に、遮蔽構造の適正化を行うことで、より高線量率の環境での測定を可能とし、シャッター機構を設けることで測定の高精度化を図り、300mSv/h(従来比約20倍)の高線量率環境下でのガンマ線強度分布の測定を可能にしました。
開発したガンマカメラの特長は以下の通りです。
- (1) 高線量率環境での測定が可能
- 高線量率環境に対応するために、これまでガンマカメラのソフトウェアに実装していた信号処理機能の一部を、FPGA*4に組み込みハードウェア化しました。信号処理性能が向上し、ガンマ線の測定レートを約2倍に高速化できたことで、従来比2倍の高線量率環境への対応が可能になりました。さらに、ガンマ線強度分布測定のためにガンマカメラ内部に組み込んでいる2次元ピクセル型ガンマ線検出モジュール*5の遮蔽体の厚さを増強することで、従来比約10倍の高線量率の測定が可能になりました。今回開発のガンマカメラでは、これらの装置を組み込むことで、従来比約20倍の高線量率環境(300mSv/h)下での測定を可能にします。
このガンマカメラを高線量率環境での測定に用いるには、ロボットでの遠隔操作が必要です。そこで、ロボットへの搭載可能な重量(80kg以下)とするために、2次元ピクセル型ガンマ線検出モジュールの遮蔽構造の適正化を行いました。また、遠隔移動ロボットの通信機能にガンマカメラの映像・制御信号を搭載するシステムとすることで、原子炉建屋内での遠隔操作による測定を実現しました。
- (2) ガンマ線測定の高精度化
- 原子炉建屋内は周囲の床・壁が広く汚染されているため、計測対象物以外の汚染体から放射されるガンマ線が誤差要因となり、測定精度が低下します。この誤差を取り除くために、ガンマカメラのコリメータ*6前方にシャッター機構を設けました。シャッターを開いた場合は、周囲の誤差要因となるガンマ線とカメラの視野部分からのガンマ線を測定します。シャッターを閉じた場合は、周囲の誤差要因となるガンマ線のみを測定します。開閉時のガンマ線の差から、視野部分からのガンマ線のみの測定を可能とし、ホットスポット等の線量集積箇所の特定性能を向上させました。また、スキャン型レーザ距離計*7を適用し、カメラから測定対象までの距離をピクセル毎に測定し、測定距離により生じる計測強度の差異を補正処理することで、より高精度な測定を可能としました。
今回開発したガンマカメラは、災害現場における汚染状況調査に向け、今後、東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学田所研究室と協力し対応する予定です。
用語
- *1
- mSv/h : 被曝の大きさの単位。
- *2
- ガンマ線 : 放射性元素から放出される電磁波の一種で、物質を透過する力が強い。
- *3
- 核種 : 陽子と中性子の数によって決定される原子核の種類。
- *4
- FPGA(Field-Programmable Gate Array) : 演算ロジックを書き換え可能な大規模集積回路。
- *5
- 2次元ピクセル型ガンマ線検出モジュール : 2次元に配列したガンマ線検出素子と検出素子からの信号読出し回路を組合せたモジュール。
- *6
- コリメータ : 検出器への放射線の入射方向を制限するための装置。通常、放射線遮蔽性能の高い鉛またはタングステンで製作される。
- *7
- スキャン型レーザ距離計 : レーザをスキャンさせることで、測定エリア内までの距離を多点で測定する装置。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 影山]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508(直通)
以上