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2012年12月17日
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所
国立大学法人長崎大学
株式会社日立製作所

総合地球環境学研究所と長崎大学が、日立の「指静脈認証」を活用し
ラオス人民民主共和国で肝吸虫症などの感染症撲滅に向けた健康調査を実施

調査時の本人特定精度を大幅に向上

  大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所(所長:立本 成文/以下、地球研)は、ラオス人民民主共和国(以下、ラオス)での肝吸虫症などの感染症撲滅を目的に、国立大学法人 長崎大学(学長:片峰 茂)の熱帯医学研究所(所長:竹内 勤/以下、熱研)と共同で、株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)の「指静脈認証」を活用し、ラオス南部のサワナケート県ソンコン郡ラハナム地区の中学生・高校生など約500名を対象とした検便などの健康調査を2012年12月17日から12月22日まで行います。
  具体的には、検便を回収する際に、調査対象者の本人情報(氏名、年齢など)や検便登録番号などの情報とその対象者の指静脈情報をデータベースに登録します。これにより、次回以降の調査の際に調査対象者が指静脈認証を行うことで、調査対象者と本人情報や検便の検査結果との正確なマッチングが可能となります。ラオスの一部地域では多くの住民が複数の名前や居住地を持っており、継続調査を行う際の本人特定が困難な場合がありましたが、この取り組みにより、本人特定精度の大幅な向上が期待されます。
  また、来年2月以降にラハナム地区における検便調査の対象者以外の約6,500名の指静脈情報を取得し、その後、地域住民の動向を継続的に把握する「健康と人口の動態追跡調査システム」(以下、HDSS)に活用する予定です。

  地球研では、研究プロジェクト「熱帯アジアの環境変化と感染の調査」の一環として、昨年、ラハナム地区の住民約3,000名を対象に検便などの健康調査を行いました。しかし、調査を進めていく中で、調査対象者本人の特定や登録された本人情報とのマッチングが難しいといった問題が発生しました。そこで今回、この問題を解決することを目的に、既にケニアやラオスにおいて、指静脈認証を活用して地域住民の動向を継続的に把握するHDSSを行った実績のある熱研と協力し、ラハナム地区での再調査を行うことにしたものです。

  今後も地球研と熱研は、肝吸虫症などの感染症に関する予測、さらには、感染予防に向けての取り組みや環境改善に向けての提言をめざした研究・調査を継続していきます。また、HDSS実施地区におけるワクチン接種記録やマラリア予防のための蚊帳の提供記録、病院情報との連結といったさまざまな履歴情報の管理に「指静脈認証」を適用し、疾病予防やその対策を推進することを検討していくほか、ラオスにおける住民情報の充実にも貢献していきます。
  また日立は、すでにグローバルでの利用が広がっている「指静脈認証」のさらなる活用範囲の拡大に向け、技術の開発並びに製品やサービスの拡充に努めていきます。

肝吸虫症について

肝吸虫症とは、哺乳類を終宿主(成虫が宿る相手)とする、肝臓内の胆管に寄生する吸虫が体内に入ることで感染し、食欲不振、下痢、肝腫大などの症状や肝硬変を引き起こす場合もある感染症の一種です。ラオスの一部地域では肝吸虫の感染が風土病化しており、この背景には地域住民の淡水魚の生食習慣があると考えられます。

[画像左]肝吸虫の成虫、[画像右]肝吸虫の卵

「エコヘルス・プロジェクト(熱帯アジアの環境変化と感染症)」の研究について

感染症の流行形態は、病原体、媒介動物、宿主を取り巻く環境に左右されます。従来の医科学的アプローチでは、普遍的な健康像を目指した比較的短期的な解決が模索されてきました。本プロジェクトでは、人類と感染症を上記3者(病原体、媒介動物、宿主)の生態学的な関連ととらえ、人間の生活と、それを取り囲む環境全体の問題として一体的・分野横断的に記載・分析する「エコヘルス」として、研究を行っています。

[画像左]ラオス・サワナケート県・ソンコン郡ラハナム地区の位置図、[画像右]ラハナム地区での健康調査の様子

健康と人口の動態追跡調査システム(HDSS:Health and Demographic Surveillance System)について

住民登録や人口の動態(婚姻、出生、死亡、移動)を把握する仕組みのない「地域」において、その「地域」に居住する住民を登録し、その動向を系統的かつ継続的に行う取り組みのことで、「ある限られた地域」を丸ごと観察し、疫学調査や介入研究を行い、その結果を広く一般に還元するものです。現在では、アジアやアフリカをはじめとした途上国の健康・保健情報を安定して提供するための手法として価値が高まっています。

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所について

総合地球環境学研究所は、地球環境学の総合的研究を行う大学共同利用機関として2001年4月に創設されました。「環境問題の根源は、人間文化の問題にある」という哲学に基づき、「人間と自然系の相互作用環」の解明と「未来設計のシナリオ」の検証を通して、既存の学問分野の枠組みを超えた総合地球環境学の構築を目的としています。

長崎大学 熱帯医学研究所について

長崎大学熱帯医学研究所は1942年に長崎大学に設置された東亜風土病研究所を前身とします。1967年に熱帯医学研究所と改称され、アジア、アフリカなど、その研究活動を途上国へと拡大してきました。熱帯地域では、その複雑多様な自然・社会環境が、熱帯病をはじめとする錯綜した健康問題を引き起こし続けています。このような認識に基づき、熱帯病の中でも最も重要な領域を占める感染症を主とした疾病と、これに随伴する健康に関する諸問題を克服することを目指し、関連機関と協力して、熱帯医学及び国際保健における先導的研究と、その研究成果の応用による熱帯病の防圧ならびに健康増進への国際貢献、さらにこうした問題に関わる研究者と専門家の育成を進めています。

「指静脈認証技術」について

指静脈認証技術は、日立が開発した生体認証技術で、指の静脈パターンで個人を認証するものです。近赤外線を指に透過させて得られる指の静脈パターンの画像から静脈の存在する部分を構造パターンとして検出し、あらかじめ登録した静脈の構造パターンと照合させて個人認証を行う技術です。指静脈は体内にある情報であるため、偽造や成りすましが極めて困難であり高いセキュリティレベルを実現します。日立では、2002年に指静脈認証装置を製品化して以来、ATMの本人認証やPCログイン、入退室管理など、さまざまな分野での適用を広げてきました。

[画像]日立指静脈認証装置

研究内容に関するお問い合わせ先

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所 [担当:門司]
〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457-4
TEL : 075-707-2215(ダイヤルイン)

国立大学法人長崎大学 熱帯医学研究所生態疫学分野 [担当:金子、中山]
〒852-8523 長崎県長崎市坂本一丁目12-4
TEL : 095-819-7866(ダイヤルイン)

株式会社日立製作所 情報・通信システム社 公共システム営業統括本部
カスタマ・リレーションズセンタ [担当:西本]
〒136-8632 東京都江東区新砂一丁目6-27 新砂プラザ

以上

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