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2012年10月10日

直接メタノール形燃料電池向けに、
電池のコストを約45%低減できる電極を開発

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、直接メタノール形燃料電池(以下、DMFC)向けに、電池のコストを約45%(当社比)低減できる電極を開発しました。具体的には、DMFCの空気極に窒素ドープカーボン触媒を、燃料極にパラジウム-ルテニウム合金触媒を適用した電極を開発し、これまで電極の触媒に使用されている高価な白金を使うことなく発電することが可能となります。今後、災害時や室外使用向けのポータブル機器用途など、小型電源への適用をめざします。

  近年、災害時や室外での電源確保が難しい場合に使用できる可搬型電源へのニーズが高まっています。また環境配慮の観点から、二酸化炭素排出量を抑制可能な電源も求められており、燃料電池はこれらの要求に応えるクリーンな発電システムとして期待されています。特にDMFCは、燃料電池にメタノールを直接供給できるため、水素製造のための補機が不要となることから小型化が容易であり、ポータブル機器電源などへの応用が見込まれています。
  燃料電池の主要部材である電極は、メタノールの酸反応を迅速に進行させるとともに、メタノール・酸素などの反応物質の供給や水・二酸化炭素の反応生成物の排出を効果的に行うことが求められています。これまで、燃料電池の電極には電極反応しやすい白金、または白金を含む合金触媒が使われており、電池のコストに占める電極触媒の割合が大きくなっていたほか、電解質膜を透過したメタノールの酸化反応により生成した一酸化炭素が空気極の白金に吸着し発電性能が低下してしまうなどの課題がありました。これらの課題に対し日立は、材料・システムの研究開発を進め、今回白金を使用しない電極として、空気中の酸素還元反応を行う空気極に窒素ドープカーボン触媒を、メタノールの酸化反応を行う燃料極にパラジウム-ルテニウム合金触媒を適用した電極を開発し、従来と比べて電池のコストを約45%低減することが可能となりました。特長は次の通りです。

1. 窒素ドープカーボン触媒の酸素還元反応活性の向上
今回、空気極の触媒合成プロセスにおいて触媒の原料材料と合成条件を見直し、カーボンに窒素を添加(ドープ)させた高性能な窒素ドープカーボン触媒を開発しました。これにより、酸素還元開始電位を向上させることが可能となり、酸素還元反応をより効率的に実施できるようになります。また、表面積の大きな材料の上に窒素ドープカーボン触媒を薄く広げ触媒の表面積をより増加させることにより、酸素還元反応活性を向上させました。なお、窒素ドープカーボン触媒は、メタノールとの反応が無く燃料極から空気極へ透過してきたメタノールによる発電性能の低下が発生しないため、より高い発電効率を維持できます。
2. 電極構造の最適化による発電性能の向上
窒素ドープカーボン触媒に最適な電極構造において、電極に使用する窒素ドープカーボン触媒量と水素イオンが透過するイオン交換樹脂の添加量を最適化させました。電極反応をより促進させるとともに、電極内部での二酸化炭素や酸素の反応ガスや水素イオンなどを効率的に透過・排出できるようになるため、発電性能の向上を実現します。
3. パラジウムへのルテニウム添加によるメタノール酸化反応活性の向上
メタノールの酸化反応を行う燃料極に、酸化触媒としてアルカリ溶液中で反応活性を持つパラジウムにルテニウムを加えることにより反応活性を向上させたパラジウム-ルテニウム触媒を開発しました。今回、ルテニウムの添加に加え、触媒合成プロセスを見直すことで、約30nmと粒子が大きいパラジウム触媒を約3nmに微細化しました。これにより、触媒の表面積を増加できるためメタノール酸化反応活性の向上を実現します。

  日立は、今後も地球環境への負荷を低減するクリーンな発電システムに貢献する新しい技術の開発や、その実用化に向けた取り組みを推進していきます。

  なお、本技術は、2012年10月7日から12日に米国ハワイで行われるPacific Rim Meeting 2012 on Electrochemical and Solid-State Scienceにて紹介する予定です。

直接メタノール形燃料電池の構成

[画像]直接メタノール形燃料電池の構成

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 影山]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508(直通)

以上

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