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2011年11月30日

ガソリンエンジンの燃焼過程ですす(粒子状物質)の生成状況を
シミュレーションする技術を開発

エンジンの燃料システムの開発工数の低減に貢献

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、ガソリンエンジン(以下、エンジン)の空気吸入から、燃焼、すす(粒子状物質)の生成過程までを一貫してシミュレーションする技術を開発しました。本技術は、すすの生成過程を化学反応式を用いてモデル化し詳細に解析する技術と、エンジン内における空気の流れや燃焼過程を解析する三次元流体シミュレーション技術を統合し開発したものです。エンジンの燃料システムの開発において、すすの生成状況を把握するために行われている試作や実機評価を本シミュレーション技術に置き換えることで、開発工数の低減が期待されます。今後は、本シミュレーション技術をアルコールや天然ガスなどのガソリン以外の燃料にも適用していくとともに、すすの排出量の予測などに応用を図っていきます。

  北米や欧州では、2014年より自動車のエンジンから排出されるすすの排気規制の導入が検討されており、自動車用燃料は従来のガソリンや軽油に加えてアルコールや天然ガス等の多様化が進んでいます。こうした排気規制に対応するために、自動車エンジンの燃料システムの開発では、すすの生成状況を様々な種類の燃料ごとに高い精度で評価することが求められます。しかし、これまでのすすの生成状況のシュミレーション技術は、実験から得たデータをベースとしたモデルのため、試作や実機評価を繰り返し行う必要がありした。また、シミュレーションできるすすの濃度範囲や燃料の種類は、実験したものに限られることから、新たな排気規制や多様化する燃料に対応するためには、多くの実験や試作、実機評価が必要となり、開発工数がさらに増加します。
  そこで、日立は、化学反応式を用いてすすの生成過程を詳細に解析する技術と、空気の流れや燃焼過程を解析する三次元流体シミュレーション技術を統合することにより、エンジンの空気吸入から燃焼、すすの生成過程までを一貫してシミュレーションする技術を開発しました。

  すすは、燃焼過程で燃え残った炭化水素が様々な化学反応を経て固体化することで生成されます。そこで、日立はミュンヘン工科大学と共同で開発した、すすの生成過程を化学反応式を用いてモデル化し詳細に解析する技術に着目しました。従来は、数千種類の化学反応の連立方程式を解く必要があり、計算負荷の制約からエンジン開発などへの適用は困難でしたが、すすの生成過程を詳細に分析することで、流体の温度や圧力、燃料濃度等を用いて連立方程式を簡素化し、基本的な化学反応式に集約するモデルに改めました。これにより計算負荷を大幅に低減できることから、複雑なエンジン形状のシミュレーション技術へ適用が可能となりました。本モデルを適用したすすの生成過程を詳細に解析する技術と、エンジン内における空気の流れや燃焼過程を解析する三次元流体シミュレーション技術を統合することにより、エンジンの空気吸入から燃焼、すすの生成過程までを一貫してシミュレーションすることが可能となりました。本シミュレーション技術により、エンジンの燃料システムの開発工数の低減が期待されます。また、燃料に合わせて化学反応式を組み替えることで、様々な燃料に対応できるため、アルコールや天然ガスなどの他の燃料へ適用していくとともに、すすの排出量予測などに応用を図っていきます。
  なお、本技術の詳細は、11月29日から12月1日まで東京工業大学で開催される「第22回内燃機関シンポジウム」(社団法人自動車技術会と社団法人日本機械学会の共催)において発表する予定です。

[図] ガソリンエンジンの空気吸入から燃焼、すす(粒子状物質)の生成過程のシミュレーション

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508(直通)

以上

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