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2010年9月8日
空調機2台の小規模実験システムで空調電力18%〜34%の削減効果を確認
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、IT機器と空調機器をリアルタイムに連係制御することにより、データセンタの空調電力を削減する技術を開発しました。本技術は、データセンタ内の気流や温度の状況に関する解析結果を、事前に表形式でデータベースに記録することで、実際のデータセンタ稼動時の最適条件の算出に要する時間を大幅に短縮し、リアルタイムな連係制御を実現します。本技術を空調機2台の小規模実験環境に適用したところ、空調機の給気温度を固定した環境に比べ、空調電力を18%〜34%削減する効果を実証しました。
近年、クラウドサービスに代表されるデータセンタの活用事業が増加する一方、地球環境への配慮から、大きな電力を消費するデータセンタの省電力化が課題となっています。そうした中、日立グループでは、 データセンタ省電力化プロジェクトCoolCenter50のもと、2012年度までに2007年度比でデータセンタの消費電力を最大50%削減するという目標を掲げ、これを推進しています。
データセンタの省電力化には、IT機器だけでなく、大きな消費電力を占める空調機や無停電電源の省電力化も必要です。そこで今回日立は、IT機器と空調機を連係させた運用管理において、IT機器に割り当てられる負荷の配置と、空調機の稼動台数ならびに給気温度を連係してリアルタイムに制御するデータセンタの電力制御技術を開発し、その効果を実証しました。開発技術の詳細は以下の通りです。
日立はこれまで、三次元熱流体解析*1を行なう高速シミュレータを用いて、その時々のセンタ内の任意の位置の温度を予測し、IT機器と連係して空調機の制御を行なう技術の開発を進めてきました。しかし、三次元熱流体解析を基に最適な制御条件を求めるには、空調機の稼働台数や給気温度などの様々な組合せに対して長時間の解析を要することから、これまでは、測定データに対して経験的に設定した省電力制御条件を高速シミュレータにより確認し、制御するに留まっていました。そこで今回の開発では、データセンタ内の熱の流れを線形近似*2することで、三次元熱流体解析によって、各IT機器の入排気温度と空調機の給還気温度の関係を表す温度感度*3をテーブル化しました。こうして予め温度感度をテーブル化しておくことにより、実運用時に短時間での解析が可能になりました。
この温度感度テーブルを用いて、過去の稼動履歴から予測したIT機器の予測温度上昇値に対し、空調電力を最小化する最適化計算を行なうことにより、IT機器に対する空調性能を保証した状態での稼働台数と給気温度のリアルタイムな制御を可能にしました。また、このテーブルから求められるIT機器の電力変動に対する空調機の電力変動を空調効率*4として設定し、この空調効率が高いIT機器へ優先的に作業負荷を割り当ててシステム全体の空調効率の最適化を行なうことにより、IT機器と空調機を合わせたデータセンタの総消費電力を削減しています。
空調機2台の小規模実験環境において、今回開発した連係制御技術による空調電力削減の効果の検証を行なったところ、従来の空調機2台による給気温度を固定した空調に比べ、空調電力を空調機2台の稼動制御で18%、1台の稼動制御で34%削減できることを確認しました。
今回は、小規模環境での検証ではありますが、データセンタのフロアや区画における最適化制御に容易に展開できる技術であり、CoolCenter50の目標達成に向けた「IT-設備連係管理システム」の基本的な省電力効果を確認することができました。今後は、当社データセンタにおいて本技術の実証実験を実施し、実際のデータセンタ環境下での省電力効果の実証を進めます。
なお、本成果は2010年9月7日から9月9日まで、九州大学伊都キャンパス(福岡県福岡市)で開催されている「第9回情報科学技術フォーラム(FIT2010 : Forum on Information Technology 2010)」にて発表しました。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 木下、工藤]
〒185-8601東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)
以上