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2010年3月5日
株式会社日立総合計画研究所
日立グループのシンクタンクである株式会社日立総合計画研究所(取締役社長:塚田 實/以下、日立総研)は、以下の通り、短期経済予測を改定しました。
世界経済は不安定ながら回復が継続している。09年前半に景気の最悪期を経た後、09年後半からは世界各地でおおむね回復基調となった。中でも中国は世界に先駆けて景気回復局面に入り、09年暦年で8.7%の高い経済成長を達成した。アジア各国は中国向け輸出を契機に生産・在庫サイクルが回転し、自国政府の景気対策効果もあって、目下、水準としては十分ではないものの、製造業を中心に景気の
底離れが進展している。
欧米に目を転じると、米国では財政出動と超金融緩和が奏功し、個人消費とインフラ投資が景気を下支えした。アジアを始点とする世界経済の回復傾向により、生産や輸出にも持ち直してきた。しかし、欧州は、ドイツなど一部を除いて景気回復の勢いは弱い。さらにギリシャなどの財政赤字懸念から共通通貨ユーロの信任も揺らいでいる。
各国の回復ペースの違いは、大まかにいって自国景気対策効果の違いと、中国など新興国需要の恩恵、という2要因の度合いに帰結する。中国の景気回復も元はといえば4兆元の景気対策であり、目下の回復基調は内外需を問わず政策効果の賜物といえる。
10年以降も各国の景気対策は継続される見通しだが、特に先進国では10年夏以降は規模のピークアウトが目立つようになる。金融緩和政策も徐々に正常化に向けた準備が進む。景気刺激パッケージが一巡する中で、民需へのバトンタッチ、すなわち景気回復の自律性が問われることになる。大幅な国内需要不足と失業率の高止まりの中、先進各国はバブルの後遺症を確かめながら慎重に財政・金融の舵取りをしていくことになる。
一方、世界の景気回復をけん引してきた中国は、資産バブルなど景気過熱への対処を迫られている。10年夏以降には金融引き締め傾向を強め、輸出の安定性が確認されれば人民元レート切り上げに着手するとみる。極端な景気後退に結びつくリスクは小さいが、やはり10年後半には回復ペースがやや鈍るだろう。
リスク要因としては、南欧の財政赤字を発端とするユーロ問題(ソブリン・リスク)、米国の中間選挙をにらんだ財政・金融の緊縮化懸念(出口戦略失敗リスク)、中国の金融引き締めの影響(過熱抑制失敗リスク)など。
2010年世界経済は、先進国、新興国とも10年後半に回復ペースが鈍り、自立回復力は弱いと予想。実質GDP成長率は世界全体3.7%、米国3.0%、EU 0.9%、中国9.0%、インド7.7%。円レートは、ドル90円、ユーロ120円、ポンド130円。原油価格は80ドル/バレルと予測。
これまで中国向け輸出の回復、エコカー/エコポイント制度による個人消費下支え効果などで景気の底打ちを果たしてきた日本経済だが、国内市場の縮小が続き、設備投資の回復が極端に遅れている状況下、海外需要変動へのぜい弱性はますます高まっている。
10年度には、デフレと財政赤字が深刻で追加的な景気対策の余地は乏しい中、新経済成長戦略の策定、家計向け支援策の実行、消費税増税議論の開始など、国民の期待成長率に大きく影響する事案が控えている。日本経済の回復の自律性を占う上で、これらの要素が極めて重要となる。2010年度の実質GDP成長率は、政府投資が減少する一方、民需と外需が緩やかに回復し1.5%と予測。
株式会社日立総合計画研究所 経済グループ
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