このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。
2009年6月22日
将来の高速電子デバイスの量産プロセス実現に貢献
株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆/以下、日立)は、このたび、現在多くの電子デバイスに利用されているシリコンの10倍以上速い電子移動度*1が期待されるグラフェンを、サファイア基板*2上に作製する技術を開発しました。グラフェンは、炭素が蜂の巣構造に並んだ厚さ0.34nm(1nmは100万分の1mm)の単原子層のシートで、たとえば通信基地局のネットワーク機器などに用いられる高速電子デバイスへの応用が期待されています。グラフェンは、シリコン基板や炭化シリコン基板上に実験的な手法で作製することは可能でしたが、電子デバイスに適した基板である、絶縁体のサファイア基板上に作製する技術は確立されていませんでした。今回、量産に適した気相成長法*3をグラフェンに応用し、絶縁体のサファイア基板上においてその層数を制御する技術と、光透過率*4により簡便に層数を計測する技術を開発しました。これにより、サファイア基板上に大量にグラフェンを作製することが可能になり、グラフェンの電子移動度を活かした高速電子デバイスの量産プロセス実現に貢献します。
本技術は、国立大学法人東北大学(総長:井上 明久/以下、東北大)多元物質科学研究所京谷隆教授グループと共同で開発したものです。
グラフェンは、多層に積層したものがグラファイトと呼ばれ、筒型に巻いたものがカーボンナノチューブと呼ばれています。室温での電子移動度がシリコンと比べて10倍以上速いことから、高速の電子デバイスへの応用が期待されています。しかし、これまで2004年に英国マンチェスター大学のA. K. Geim教授らが、粘着性のテープを用いて、単結晶グラファイトを引き剥がす方式により、一枚のグラフェンを取り出すことに成功したほか、実験的な手法でシリコン基板や炭化シリコン基板上に作製することは可能でしたが、サファイア基板などの絶縁体基板上への作製、あるいは量産技術の確立には到っていませんでした。
今回、日立は東北大と共同で、量産に適した気相成長法をグラフェンに応用し、その層数を制御する技術と、光透過率測定により簡便に層数を計測する技術を開発しました。本技術により、サファイア基板上にグラフェンを大量に作製することが可能になり、グラフェンの電子移動度を活かした高速電子デバイスの量産プロセスの実現に貢献します。
開発した技術の詳細は下記の通りです。
日立は東北大と、鋳型法によるカーボンナノチューブの作製技術*5をサファイア基板に応用する検討を進め、酸化アルミニウムがグラフェンに対して触媒活性*6を有することを見出し、気相成長法を用いて酸化アルミニウム単結晶であるサファイア基板の上に、比較的低温(600〜700℃)で一層から数層のグラフェンを作製する技術を開発しました。本技術は作製に要する時間が短いことから、大量生産に適した技術です。今回、作製に成功したグラフェンのドメインサイズ*7は10nm程度です。
従来、グラフェンの層数を計測するには、透過型電子顕微鏡などの大掛かりな装置が必要でした。今回、透明なサファイア基板を用いることにより、グラフェン一枚の光透過率が97.7%であることを利用し、光透過率測定という簡便な方法で、グラフェンの層数を計測する技術を開発しました。
今後、日立はグラフェンのドメインサイズを拡大するなどの開発を推進し、本技術を、グラフェンを用いた高速電子デバイスを量産するプロセスへの適用を目指します。
なお、本技術は、6月21日から26日まで北京で開催されている「Tenth International Conference on the Science and Application of Nanotubes」にて発表しました。
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
TEL : 0294-52-7508 (直通)
以上