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Hitachi

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2009年6月2日

0.075mm角の粉末状ICチップのハンドリング技術を開発

細胞捕捉技術を応用しチップを1個ずつ基板上に配置することが可能に

  株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆/以下、日立)は、このたび、0.075mm角、厚さ7.5µm(マイクロメートル:1µmは1000分の1mm)という粉末状のICチップを、1個ずつ取り扱うことができるハンドリング技術を開発しました。粉末状のICチップは、紙などに埋め込むことが可能なことから、膨大な数の物品の管理や有価証券などの紙の識別を、安価かつ簡易に実現するキーデバイスとして新たな市場の開拓が期待されています。しかし、チップが極めて小さく薄いため、乾燥した環境では、静電気などの影響を大きく受けチップ同士が集合したり飛び散ったりすることから、チップを1個ずつハンドリングすることは困難でした。今回、バイオテクノロジーや最先端の医療分野で利用されている細胞の捕捉技術(細胞マニピュレーション)を応用し、溶液にICチップを入れ分散させることで、静電気などの影響を受けずに、1個ずつICチップを取り出し基板上に配置することが可能になりました。
  本技術は、µmサイズの粉末状ICチップの実用化に貢献する基本技術となります。

  近年、ICカードなど、セキュリティや利便性を向上する目的でICチップが広く利用され始めています。これらICチップを1個ずつ取り扱うためには、まずICチップを数万個程シリコンウエハ上に形成し、そのシリコンウエハを粘着シートに貼りつけICチップを分離します。その後、突き上げピンでICチップを1個ずつ突き上げシートから剥がし、真空ピンセット*1で吸引して取り出す必要がありました。しかし、今後、応用分野の拡大に向け、ICチップの小型化が進み、大きさが100µm以下になった場合、突き上げピンで操作する際にチップに強い衝撃を与えてしまうことや、ICチップを1個ずつ操作するために高い精度の位置合わせ技術が必要になるなど、従来の方法を用いることが困難になります。さらに、乾燥した環境ではICチップに対して重力よりも静電気やファンデルワールス力*2などの力が大きく働き、これらの物理的な要因によりICチップ同士が集合したり飛び散ったりすることから、ICチップを1個ずつ取り扱い基板などに配置することは一層困難になります。
  このような背景から、µmサイズの粉末状ICチップの実用化には、ICチップを1個ずつ取り扱う技術の開発が求められていました。

  そこで、日立は、バイオテクノロジーや最先端の医療分野で利用されている細胞の捕捉技術(細胞マニピュレーション)に注目し、この技術を応用してICチップを1個ずつ取り扱うことができるハンドリング技術を開発しました。開発したのは、粉末状のICチップを溶液中に分散させ、マイクロピペット*3を用いて1個ずつ吸引するという技術で、特長は以下の通りです。

  1. 溶液に界面活性剤を加えることで、ICチップの親水性を高め、ICチップ同士の集合・飛び散りを抑制しました。
  2. 溶液中に強制的に渦を作り出すことで、チップの分散性を高めました。

  今回、1mlの溶液に数千個のICチップを投入して実験を行なったところ、1個ずつ確実に取り出せることを確認し、本技術が粉末状ICチップのハンドリング技術として有用であることを実証しました。

  なお、本技術は5月27日から米国サンディエゴで開催された「Electronic Components Technology Conference」において29日に発表しました。

*1
真空ピンセット : 細い管の中を減圧して、その先端部にウェハやチップを吸着させて搬送する道具をいい、対象物の吸着部である細い管、真空装置で構成されるもの。
*2
ファンデルワールス力 : 二物体間の距離が原子間隔に近くまで接近すると二面間に引力が発生するため吸着が起こり、さらに接近すると反発力が生じる。この引力と反発力、分子間力のことをファンデルワールス力と言う。
*3
マイクロピペット : 先端が細いガラス管。DNAシーケンサのポリマー充填流路、DNA、タンパク固定の微粒子や細胞のハンドリングに利用されていたものをICチップのハンドリングに適した形状、サイズにしたもの。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)

以上

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