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2009年3月26日
国立大学法人茨城大学
独立行政法人物質・材料研究機構
株式会社日立製作所
国立大学法人茨城大学(学長:池田 幸雄/以下、茨城大学)は、独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長:岸 輝雄/以下、NIMS)、株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)などと共同で開発した、超高感度の核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance/以下、NMR)分光計測装置を用いて、環境浄化微生物*1のタンパク質や、奥久慈ウルシ含有ポリフェノールオキシダーゼ*2の構造変化を見いだしました。これによりタンパク質の機能解明と応用開発が推進されることが期待されます。開発したNMR分光計により、計測に用いる試料の体積を従来と比べ体積でおよそ4分の1、試料を溶かした水溶液の濃度を10分の1以下としながら、従来と同等以上の高感度で、複雑なタンパク質の構造変化を計測できることを実証しました。この成果は、3月27日から千葉県船橋市で開催される日本化学会、3月29日から米国カリフォルニア州で開催される第50回実験NMR学会で発表されます。
NMR分光計は、先端のバイオテクノロジー研究において、X線結晶構造解析、質量分析、ラマン分光分析などと共に用いられるタンパク質の機能・構造解析のための計測装置です。NMR分光計を用いることで、タンパク質などの分子の化学結合や、立体構造に起因するわずかな核磁気の変化を、スペクトル情報として得ることができます。NMR分光計は、生体内の状態に近い水溶液で、分子の構造や相互作用に関する情報を得ることが可能な装置ですが、核磁気が非常に小さいため、他の分析法と比べ二桁程度の高い濃度が要求され、一回の計測に多量の試料が必要なため、計測感度の面で課題がありました。
NIMS、日立、茨城大学、国立大学法人愛媛大学、国立大学法人鹿児島大学は、2003年から2007年度まで、文部科学省リーディングプロジェクト「新方式NMR分析技術の開発」に参画し、NMR分光計の感度を飛躍的に高めることが可能な、新方式のNMR分光計測技術開発に共同で取り組みました。本プロジェクトでは、日立が主体となって開発した(1) 微弱なNMR信号を捉えるソレノイド*3方式の極低温検出器、(2) 検出器と組み合わせて使用する二分割方式の超伝導磁石などの独自技術を採用し、各機関の協力により生体レベルの希薄な水溶液中でも高感度で計測が可能なNMR計測技術を確立しました。
茨城大学は、日立、NIMSと共同でこの新方式のNMR分光計測装置の利用研究に着手し、このたびその成果として、環境浄化微生物や、茨城県産の奥久慈ウルシに含まれるポリフェノールオキシダーゼの金属タンパク質分子構造変化の検出に成功しました。新方式のNMR分光計により、従来は測定が困難であった低濃度(1µM)の水溶液で、環境浄化微生物由来の銅タンパク質アズリンの構造変化を発見しました。また、従来は計測が不可能であった、標準試料管(直径5mm)、試料量70µLを用いてタンパク質のNMRスペクトルを計測できました。これは従来と比べ、およそ4分の1の小体積の試料、10分の1以下の稀薄濃度の水溶液で、従来と同等以上の高感度で計測できることを意味します。
この成果によって、タンパク質を利用した環境保全技術、バイオ燃料電池、医薬品開発、機能性食品開発などへの展開が期待されます。
茨城大学は今後、本装置を用いて、国内外の研究機関とも連携し、従来にない新しい計測を推進する予定です。
国立大学法人茨城大学 (所属) [担当:高妻]
〒310-8512 茨城県水戸市文京 2-1-1
TEL : 029-228-8372 (直通)
独立行政法人物質・材料研究機構 (超伝導材料センター) [担当:北口]
〒305-0047 つくば市千現 1-2-1
TEL : 029-859-2323 (直通)
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
TEL : 0294-52-7508 (直通)
以上