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2008年7月28日
株式会社日立製作所
日立グローバルストレージテクノロジーズ
現行量産HDDの約2.5倍の記憶容量が可能に
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)と日立グローバルストレージテクノロジーズ(本社機能:米国カリフォルニア州サンノゼ市、CEO:中西 宏明/以下、日立GST)は、このたび、ハードディスク装置(以下、HDD)に用いられている垂直磁気記録方式で1平方インチあたり610ギガビット*1(ギガは10億)の高密度記録技術を開発しました。この記録密度は、HDDの記憶容量を現行量産品*2の約2.5倍に増加することに相当します。
今回開発したのは、高記録密度達成に必須となる、65 nm級という極めて狭いトラックピッチ*3に 対応した媒体技術および記録・再生ヘッド技術です。具体的には、記録媒体について、熱に対して 安定性のある新記録膜を採用し、従来よりも記録性能を高めるとともに、ヘッド部に、書きにじみの影響を最小限に抑える65 nm級のトラックピッチ対応のWrap Around Shield (以下、WAS)*4構造ヘッドを採用し、安定したデータ記録・再生を実現する技術で、これらの媒体・ヘッド技術により、1平方インチあたり610ギガビットの高密度記録が可能になりました。今回の成果により、現行の垂直磁気記録方式*5を用いて、今後も継続的に記憶装置の容量の増大を継続的に推進できる見通しを得ました。
HDDは、企業や公共機関の大規模データベース、PCやハードディスクレコーダーをはじめとするデジタル民生機器の記録・再生装置など、社会を支える大容量記録装置として不可欠なものです。今後は情報量の爆発的な伸びが予想されており、さらなる大容量化が求められています。またHDDの大容量化は、装置の小型化や台数の増加を抑えられることから、省エネルギーで環境に配慮した社会の実現に向けた重要技術として、特に注目されています。
現在のHDDは垂直磁気記録方式が主流となっており、日立と日立GSTは、2005年4月に1平方インチ当たり230ギガビット、2006年9月には345ギガビットの記録密度を実証し、高記録密度化に取り組んできました。これに対し、現行の垂直磁気記録方式で用いられている連続膜媒体を用いた磁気記録では、将来、記録密度に限界が訪れると予測されることから、新しいヘッド・媒体を用いた方式の検討が進められています。しかし、これらの新しい方式は量産技術を含めてコスト優位性の実証も必要です。そこで、コスト的にも市場に受け入れられる水準で、現行の垂直磁気記録方式による記録密度の向上への取り組みが必須の課題となっていました。
このような背景のもと、日立と日立GSTは共同で、現行の垂直磁気記録方式に改良を加えることで、1平方インチあたり610ギガビットの高記録密度の開発に成功しました。今後、この技術を製品に適用することでHDDの一層の大容量化、小型化、省エネルギー化を実現できる見通しが得られました。
なお、本成果の詳細を2008年7月29日から31日までシンガポールで開催される磁気記録に関する国際学会 "The Magnetic Recording Conference 2008" で発表する予定です。
今回、一体形成されている記録・再生ヘッドを分離して、その性能をそれぞれ解析し最適化する技術を開発しました。これに加えてマイクロマグネティクス*6に基づいた数値計算を行うことで、媒体上に記録された信号や雑音情報を詳細に解析し、ヘッド・媒体の最適設計、材料開発を行いました。
記録磁化の熱安定性を示す異方性磁界を、膜厚方向に段階的に変化させた記録膜を開発しました。異方性磁界が大きいほど磁化反転はしにくくなりますが、この記録膜では、異方性磁界の小さな部分から磁化反転が始まり、異方性磁界の大きな部分の磁化反転をアシストするため、熱に対する安定性を保ちながら、高い書き込み性能を実現しました。同時に、磁化反転を起こす最小領域(磁気クラスタ)のサイズを低減することに成功し、その結果、高密度記録が可能になりました。
トラックピッチが狭くなると、記録ヘッドからの磁界が隣接トラックにはみ出して情報を書き換えたり、隣接トラックの情報を消去するといった書きにじみの問題が生じます。これを最小限に抑止するために、記録ヘッドの主磁極の周りを磁気シールドで覆うWAS)構造を採用し、狭トラック対応のWAS構造記録ヘッドを開発しました。また、センサ幅を微細にした際にも十分なS/N比を維持できるTMR(Tunneling Magneto-resistive:トンネル磁気抵抗効果型)再生ヘッドを開発しました。
従来のHDDでは、データを記録する際に、誤りなくデータを読み出すための「誤り訂正符号」が付加されており、ユーザデータとして利用できる記録領域が少なくなるという問題がありました。今回、「誤り訂正符号」を使わなくても誤りなくデータを読み出すことのできるHDD向け「繰り返し復号信号処理方式」を開発しました。これによりユーザのデータ記録領域を約4%拡大でき、従来の「誤り訂正符号」を持つHDDで換算すると1平方インチあたり635ギガビットの記録密度が可能になったことに相当します。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)
以上