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2006年6月19日
株式会社日立製作所
株式会社ルネサス テクノロジ
システムLSI内部の電源ノイズを1mVの精度で計測する技術を開発
- 電源電圧低下による性能劣化を回避するための電源設計にフィードバックが可能 -
株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区/執行役社長:古川 一夫/以下、日立)と、株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区/会長&CEO:伊藤 達/以下、ルネサス テクノロジ)は、このたび、90nmプロセス世代以降のシステムLSIで、チップ内部の電源ノイズ分布を可視化する「オンチップ電源ノイズ計測技術」を開発しました。
本技術は、システムLSI内に複数の超小型電圧計回路を集積し、電源電圧の変動を1mVの精度で観測するというもので、システムLSIが動作している最中のチップ内部の電源ノイズを計測できます。電源電圧の低下はLSIの性能劣化を招くため、新技術を用いて観測された結果を解析し、ここで得られた知見を次機種のシステムLSIの電源設計にフィードバックさせることで、設計の効率化と性能向上が可能となります。
情報機器の心臓部となるシステムLSIは、従来、これを構成する素子の微細化により、回路規模の増大と動作周波数の向上を達成し、高機能化、高性能化を実現してきました。しかし、90nm世代以降のプロセスを用いたLSIでは、回路規模が増大するなかで、LSIの電源設計の複雑化が新たな課題となっています。
たとえば、LSI内部で局所的に電力消費が集中するホットスポットの発生により、内部の電源電圧が設計時の想定以上に低下し、動作性能を劣化させるといった問題が懸念されます。従来の延長で、動作マージンをより多く見込んだ電源設計を行なうと、動作マージンは動作性能とトレードオフの関係にあるため、LSIの性能向上を阻害してしまいます。今後、システムLSIの回路規模が一層増大することから、設計の効率化とシステムLSIの高性能化を両立していくためには、システムLSI内部の電源供給状態を正確に把握して課題を解析し、それを次機種の電源設計に活用していくことが必須となります。
この課題に対応するため、日立とルネサス テクノロジは、システムLSI内部に複数の超小型の電圧計回路を集積し、実際のアプリケーションプログラムの動作中にチップ内部の電源ノイズをリアルタイムで計測し、可視化する「オンチップ電源ノイズ計測技術」を開発しました。
新たに開発した「オンチップ電源ノイズ計測技術」の特長は、以下の通りです。
(1)周波数変調型電圧測定技術
システムLSI内部の微小な電源ノイズを高精度に測定するためには、測定する側に高いノイズ耐性が必要です。本技術は、リングオシレータ*を使って微小な電圧の変動を周波数の変動に変換し、それをチップ外部の高性能測定器で計測します。周波数変調方式とすることで、測定系でのノイズ耐性が高まり、時間分解能約5nsで1mV精度の高精度な測定が可能となりました。
(2)測定点のグラウンド電位を基準電圧に用いた電源ノイズの測定
電源電圧の変動を測定するためには基準電圧が必要ですが、システムLSI内部に共通の基準電圧は存在しません。そこで、本技術では、測定点の回路のグラウンド電位をローカルな基準電圧とし、これに対する変動を測定することで、内部回路にかかる電源電圧の実質的な変動を求めています。
(3)超小型電圧計の複数搭載によるチップ内電源ノイズ分布の可視化
リングオシレータで構成される電圧計回路は大変に小さく、LSI上に複数搭載できることに加えて、各電圧計が発生する信号をチップ外部へ送出する増幅回路を共有し、小面積の測定回路を実現しています。また、複数の電圧計回路で測定したデータを用いて、チップ内の電源ノイズ分布を作成し、可視化することが可能です。
今回開発した技術を用いることで、動作中のチップ内部の電源ノイズを容易、かつ高精度に測定できるようになりました。これにより、チップ内部の電源電圧の状態を正確に把握して課題を解析し、それを次機種のシステムLSIの電源設計に活用することで、システムLSIのより一層の高性能化が可能となります。
なお、本成果は、2006年6月15日から米国ハワイ州ホノルル市で開催された国際回路会議(Symposium on VLSI circuit)にて発表しています。
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用語説明 |
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リングオシレータ:奇数段のインバータ(信号反転器)をリング状につなぎ合わせた回路で、電圧に応じて一定の周波数で発振する特徴を持つ。 |
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お問い合わせ先
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株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
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株式会社ルネサス テクノロジ 経営企画本部 経営企画統括部 広報・宣伝部 [担当:佐藤]
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