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2004年6月29日
株式会社日立製作所
日本油脂株式会社
電解液を用いないリチウム二次電池の実現に向けた
高性能固体高分子電解質を開発
リチウムイオンの伝導度が従来の3倍に向上
日立製作所(執行役社長:庄山悦彦、以下:日立)は、このたび、日本油脂株式会社(社長:中嶋洋平、以下:日本油脂)と共同でリチウム二次電池用として、高いリチウムイオン伝導度を持つ新しい固体高分子電解質*1を開発しました。開発した固体高分子電解質は、室温(20℃)で、従来の3倍以上の実効的なリチウムイオン伝導度を達成しており、電解液を使用しない安全な固体電解質リチウム二次電池の実用化に近づくとともに、今後の新しい用途の開拓が期待されます。
リチウム二次電池は様々な二次電池の中で、最も高いエネルギー密度・高い出力を持った二次電池で、その特長を生かして携帯電話、ノートパソコンなどの携帯機器等に適用されており、電気自動車等への適用の検討も進んでいます。しかし、リチウム二次電池は、電解液として有機溶媒を用いているため、短絡、過充電時など、濫用時の安全対策が不可欠でした。そこで、近年では電池の安全性を向上させるため、有機溶媒系電解液に代わり、イオン伝導性ポリマーやセラミックスを用いた固体高分子電解質の開発が活発に進められています。
これまで、最高のイオン伝導度を持つ固体高分子電解質材料として報告されているポリエチレンオキシド系ポリマー*2の場合、陰イオンのイオン伝導が起こるため、実効的なリチウムイオンの伝導度は低い値にとどまっていました。そこで、日立はカーボネート系ポリマー*3を用いることにより、電解質塩の配合量を増加させ、実効的なリチウムイオン伝導性を向上させる材料を開発してきました。
今回開発した固体高分子電解質は、ポリエチレングリコールホウ酸エステル化合物*4です。固体高分子電解質は、陰イオンを固定する機能を持ったホウ素原子を、ポリエチレンオキシド系ポリマーの運動を阻害しないホウ酸エステル化合物の形で導入した構造です。日立は日本油脂のアルキレンオキシド系材料*5に関する知見と合成技術を導入することによって、この構造を分子設計し、最適な合成方法を確立しました。
その結果、この固体高分子電解質はカーボネート系ポリマーに対し、約1/10の電解質塩添加量で、実効的なリチウムイオン伝導度を維持することができました。また、ポリエチレンオキシド系ポリマーに対しては、3倍以上の実効的なリチウムイオン伝導度を実証するとともに、この固体高分子電解質を用いたモデル電池評価の結果、室温で作動可能であることを確認しました。
日立は今回開発した固体高分子電解質を用いて、電解液を使用しない安全なリチウム二次電池の実用化向けて、電解質塩添加量低減による低コスト化やリチウムイオン伝導度向上による小型高出力化に取り組んでいきます。
なお、本技術は6月28日から、なら100年会館(奈良県奈良市)にて開催されるInternational Meeting on Lithium Batteries(Electrochemical Society)にて発表しています。
用語説明
*1 |
固体高分子電解質 |
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電気伝導性を持つ固体状の物質。電池では、イオンによる電気伝導が担われます。加工性に優れているため、自由な形状への成形(薄型化、大面積化)に適しています。 |
*2 |
ポリエチレンオキシド系ポリマー |
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アルキレンオキシド材料のうち、特に繰り返し単位中に炭化水素としてエチレンとエーテル酸素を持つ構造のポリマー材料。電解質塩を添加してイオン伝導性ポリマーとして用いられる他、化粧品・医薬品分野、潤滑油・ブレーキ油、樹脂原料など、様々な分野で用いられています。 |
*3 |
カーボネート系ポリマー |
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ポリマーの繰り返し単位中にリチウムイオン電池用電解液として用いられる、カーボネート化合物と同様な構造を持つポリマー材料です。 |
*4 |
ポリエチレングリコールホウ酸エステル化合物 |
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ポリエチレングリコールと無水ホウ酸との反応により合成した化合物で、中心のホウ素原子に対し、3つのポリエチレンオキシド系ポリマーが結合した構造です。 |
*5 |
アルキレンオキシド材料 |
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炭化水素とエーテル酸素を持つ材料です。 |
| | お問い合わせ先 |
株式会社 日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:根本]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 (0294)52-5111 (代表)
以上