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2002年6月24日
 
磁気ヘッドの記録磁界をナノメートルスケールで可視化
−記録密度100ギガビット/平方インチクラスの磁気ディスク装置の開発に貢献−

磁気ヘッド記録磁界の測定結果
― 磁界ベクトル分布と方向別等高線マップ ―

    日立製作所(社長:庄山 悦彦 以下、日立)は、このたび、磁界(磁気的な力の場)の分布を、ナノメートルスケールで可視化する新しい観察技術を開発しました。この技術を、磁気ディスク装置の開発に応用したところ、磁気ヘッド表面から30ナノメートル領域の記録磁界(磁気情報をディスクに書き込む際に発生する磁界)を可視化することに、世界で初めて成功しました。本技術は、磁気ヘッドと媒体の隙間がナノメートルスケールとなる、100ギガビット/平方インチ(Gb/in2)(6.45平方センチメートル)クラスの磁気ディスク装置の開発加速や高信頼化に、大きく貢献する計測技術です。

    磁気ディスク装置は、現在、記憶容量が数十ギガバイトの製品が市販されていますが、加速するIT(Information Technology)社会の拡大とともに、今後も記憶容量は、年率100%の割合で増大すると言われています。この大容量化に対応するためには、より微小な領域に、より多くの情報を書き込むための技術革新が必須です。将来、記録容量が、面積密度で100Gb/in2クラスになると、磁気ヘッドは、磁気ディスクから10ナノメートル(10万分の1ミリメートル)以下の間隔を保ちながら、200ナノメートル程度の範囲に磁界を発生させて、情報を記録するようになります。つまり、磁気ヘッド表面から10ナノメートル以下の、微小な領域における記録磁界分布の制御が必要です。
    しかし、これまで記録磁界の評価に用いられていた電子線のローレンツ偏向(*1)法は、磁気ヘッド表面から極近傍の記録磁界を観察することができませんでした。そこで、新たな磁界観察技術の開発が、技術課題となっていました。

    このような背景から、日立では、ヘッド表面から30ナノメートル以内の、極近傍での記録磁界分布を可視化する技術を開発しました。この技術は、原子の観察に用いられている透過型電子顕微鏡を応用したものです。開発技術の特徴は、次の通りです。
(1) 電子線の加速電圧を最適化し、ローレンツ偏向による電子線の偏向角度を抑制しました。これにより、ヘッド表面から30ナノメートル以下の位置での磁界測定を実現しました。
(2) ドットパターンを開けた薄膜を通過した電子線を照射することにより、記録磁界分布を測定できるようにしました(*2)。さらに磁気ヘッドの様々な方向から電子線を照射し、コンピュータ・トモグラフィ(CT)の手法(*3)によって、空間各点での記録磁界分布の可視化を実現しました。
(3) ドットパターン画像専用の画像処理技術を、慶應義塾大学理工学部中島真人教授と協力して開発し、パターンの微小な歪みも検出することによって、高感度観察を実現しました。
(4) 磁気ヘッドを載せる試料ステージに、ギガヘルツの帯域を持つ駆動回路を搭載することにより、従来困難であった、磁気ヘッドの設計に重要な高周波磁界の観察を可能にしました。

    今回、本技術を40Gb/in2クラスの磁気ヘッド記録磁界の評価に適用し、ヘッド表面から30ナノメートルの位置で、記録磁界分布の観察に成功しました。これによって、磁気ヘッドの形状や材質などの設計パラメータと記録磁界の関係を詳細に調べ、磁気ヘッドの性能を高めるための設計指針を得ることができました。日立では、今後、本技術を、100Gb/in2を超える磁気ディスク装置向け磁気記録ヘッドの単体性能を評価する技術として活用し、磁気ディスク装置の高性能化・高信頼化に貢献していきます。

■用語説明
(*1)ローレンツ偏向:磁界中を運動する電子にはローレンツ力が作用する。この力により、磁界中に入射された電子線の軌道が曲げられることをローレンツ偏向と言う。日立では、1989年に走査電子顕微鏡技術を応用し、ヘッド表面から数百ナノメートル離れた位置の記録磁界を、この原理で測定する磁界評価装置を開発した。本装置により、ヘッドの記録磁界の分布形状を知ることが可能となり、当社の薄膜磁気ヘッドの開発において、重要な指針を与えてきた。しかし、この手法を磁気ヘッド表面近傍の測定に適用すると、通過した電子線の一部がローレンツ偏向によって磁気ヘッドに衝突し、正しい結果が得られないという課題があった。
(*2)ローレンツ偏向で歪められたドットパターンを画像としてとらえて、偏向を受けない場合の画像と比較し、計算機処理によって、ヘッド磁界の成分のみを抽出する。
(*3)被測定物の複数の投影情報から、計算機処理によって空間の各位置の情報を求める手法。医療計測分野のX線CTが有名である。

以 上

   



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