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2002年5月17日
 
専用眼鏡が不要な3Dディスプレイ装置を開発

3Dディスプレイ装置(試作機)

    日立製作所 日立研究所(所長:児玉英世)は、このたび、専用眼鏡を使用せずに臨場感の高い立体画像を鑑賞できる3Dディスプレイ装置を開発しました。このディスプレイ装置は、LED光源を用いた小型プロジェクターと光の利用効率の高いスクリーンで構成されているため、迫力のある立体映像を高輝度かつ省電力で楽しむことができます。

    映像を立体的に見たいという需要は、立体映画やTVゲームなどのアミューズメント分野から工業・医療分野に至るまでの幅広い分野で潜在的にあります。これまで、専用の眼鏡を用いた大画面で臨場感の高い3Dディスプレイが製品化されていますが、眼鏡が煩わしいことやディスプレイを見ながら他の作業を行いにくいなどの課題がありました。また、専用眼鏡が不要な3Dディスプレイ装置として、液晶パネル上に光学素子を組み合わせ、右目と左目に異なる画像を映し出すタイプの3Dディスプレイが製品化されていますが、光利用効率が悪いことや画面サイズが制限されるということが課題となっています。

    このような背景から、当研究所では、2台のプロジェクターを用いた投射型立体ディスプレイを開発しました。このディスプレイでは、高輝度、省電力の特長を有する「指向性反射スクリーン方式」を採用することによって、専用眼鏡をかけずに立体画像を鑑賞することができます。人の右目と左目は水平に約65mm離れているため、人は右目と左目で見た物体の位置の違いから物体の奥行きを知覚することによって、物体を立体的に見ることができます。本開発装置の原理は、あらかじめ2つの視点をずらした画像をスクリーンに投射し、それぞれ右目と左目で焦点を結ぶことで立体画像を見ることを可能にするものです。開発した技術の特長は、次の通りです。

(1) 2台のプロジェクターを両目間隔に並べて画像をスクリーンに投影し、かつ反射するスクリーンの構造を工夫*1)することによって、視点をずらした2つの画像を右目と左目に焦点を結ぶ「指向性反射スクリーン方式」を開発しました。これによって、専用眼鏡を着用することなく立体画像が鑑賞できます。
(2) 目の間隔に接近して配置できる小型、省電力の卓上型の「LEDプロジェクター」を開発しました。このプロジェクターは、光源*2)に、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色ごとにLEDを複数個並べ、「コ」の字型に組み合わせたLEDアレイを用いることで、大幅な小型化を可能にしています。

    上記の「LEDプロジェクター」と「指向性反射スクリーン」を組み合わせることによって、今回、明るい部屋でも使用可能な100cd/m2以上の輝度を達成し、かつ9Wという小さな消費電力で、立体画像を鑑賞することが可能になりました。本手法は、投射型であるために大画面化が容易です。また、光を鑑賞位置に集光する方式のため、反射光の利用効率が高く、高輝度、省電力という特長を持っています。今回の試作ではプロジェクターの直上と直下のみでの鑑賞に限られていますが、スクリーンに使用しているミラーシートの光反射角を変化させることにより、鑑賞可能な位置をさらに増やすことも可能です。
    本技術は、医療の分野における診断の精度向上やインフォームドコンセントにおける患者の理解促進や、リアルな3Dコンピュータゲームといったアミューズメントの世界など、様々な分野へ活用することが可能であると考えます。
    なお、本成果は5月19日から米国ボストンにて開催されるディスプレイに関する国際会議「SID2002(Society for Information Display 2002 International Symposium)」にて発表します。

<詳細>
1) スクリーンは、左右方向にプロジェクター位置で集光する機能を持つ“ミラーシート”と、上下方向のみに光を拡散させる機能を持つ“レンズシート”から構成されています。この構成によって、プロジェクターから投射された画像を、水平方向の特定の位置にのみ反射・集光させることができます。したがって、2台のプロジェクターを両目の間隔に離しておけば、プロジェクターから投射された画像を右目と左目でずらして焦点を結ぶことができます。
2) 従来のプロジェクターに用いられている高圧水銀ランプやメタルハライドランプは、消費電力50W以上で省電力ディスプレイには適しませんでした。そこで今回、携帯電話用ディスプレイにも用いられ、消費電力1W以下でも発光することができる小型省電力光源としてLEDを採用しています。

以 上



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