株式会社日立製作所ライフサイエンス推進事業部(事業部長兼CEO 田中幸二、以下「日立」)は、このたび、研究者・技術者向けの特許公報検索システムPatentRetrieverを開発し、ASPサービスでの提供を開始しました。本サービスでは、キーワードはもちろん、明細書、論文、新聞記事などの文章全体を検索のキーとして特許公報を高速に検索することができます。更に、明細書全文といった長い文章を複数用いることによって、高い精度の検索を行うことが可能です。
ゲノム解明以後、ライフサイエンス関連の産業での研究・開発のスピードは年々速まっています。このため、例えば創薬分野では、標的蛋白質や低分子化合物そのものだけではなく、製品の製造方法や使用方法、あるいは安全性、毒性の改善など、複数の角度から他社に先駆けて特許登録していくことが、事業化の成功に向けた鍵であると考えられています。このような環境の中で、従来のように特許専門家に依頼するのではなく、研究者・技術者自身が特許の動向や権利化の傾向を十分に把握し、これを研究開発の現場にまで浸透させて、競争力のある特許取得に取り組むことが必要となってきています。
従来では、一般的な特許公報の検索では、特許分類コードや検索用キーワードの十分な知識が必要であるため、現場の研究者・技術者が特許を検索し、十分絞り込んだ検索結果を得るのは困難でした。このため、このたび日立は、研究者・技術者向けに、正確かつ簡単に特許公報を検索することができる特許公報検索システム「PatentRetriever」を開発し、ASPサービスとして提供を開始しました。
本サービスの主な特長は以下の2点です。
(1) 特許明細書全文を対象として文章をキーとする検索が可能
特許明細書や研究論文の全文などの長い文章をいくつか組み合わせて検索のキーとし、さらに特許公報全文に対して検索を行えることが最大の特徴です。特許明細書のすべての文章を検索の対象としているため、「請求項」などで特殊な用語を用いていても、「従来技術」や、「実施例」など一般的な言葉で書かれたセクションを対象に検索を行うことができ、その結果、検索キーの文書と近い内容の文書を探し当てることができます。日立の中央研究所が開発した高性能の文書検索エンジンを用いていますので、大規模文書データベースを対象としても、検索時間はほぼ"リアルタイム"(5秒 以内)と高速です。
(2) 独自の検索用クライアントによって高精度の特許検索を容易化
検索を実行するたびに、検索された文書の表題をリストとして表示することはもちろん、検索結果の特徴を表すキーワードを自動的に抽出し、ネットワーク形式で表示します。この機能により、キーワードから出願傾向を掴み、検索をさらに絞り込むためのキーワードを選ぶことができます。また、キーワードが自動的に抽出・表示されることから、研究者自身が思いつかないような単語もキーワードとして選択することができるようになっています。さらに、ネットワーク形式で表示されたキーワードを選択すると、そのキーワードを含む明細書が表示されることから、関心のある明細書を検索結果の中から選ぶ作業も効率的に行えます。
このように、研究・開発の現場で高精度の特許検索を行うことが可能となることによって、これまでよりも特許化を強く意識した研究・開発活動の実践と特許化のスピードアップが期待できます。本サービスは、ライフサイエンス分野の各企業に、日立が提供するライフサイエンスに関係するソリューションの一部として提供します。また、ライフサイエンス分野以外でも、研究・開発競争にしのぎを削る先端技術分野の企業に広く提供していく予定です。
また、文書検索エンジンには、情報処理振興事業協会(IPA)の「独創的情報技術育成事業」の一環として当社が主体となって開発した汎用連想計算エンジンGETAを用いています。このエンジンは東京大学医科学研究所・ヒトゲノム解析センターの「分子生物学関連データベースBACE」(当社との共同開発)、および国立情報学研究所の提供する図書検索サービス「Webcat Plus」(当社との共同開発)などでも利用されているものです。
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