日立製作所は、通商産業省の国家プロジェクト「技術研究組合新情報処理開発機構」(RWCプロジ
ェクト)に参画し、数十万件規模の膨大な画像データベースから、ユーザが要求する類似画像を瞬時
に検索する次世代画像検索技術を開発しました。本技術は、ユーザの求める画像を色合いや構図、質
感等のパラメータをもとに、データベースから瞬時に千枚単位で検索し、宇宙空間にみたてたPC画
面上の3次元空間に星雲状の集合体として表示し、空間内を自由にウォークスルーしながら集合体を
観察・検索する方式です。
PCのファイル容量やネットワークの通信速度が飛躍的に増大するなか、本技術は、画像データの
検索エンジンとして、コンテンツ制作、デザイン検討、ゲーム等様々な分野での活用が期待されます。
コンピュータシステムやその周辺機器の高性能化により、画像データへのアクセスや活用が進ん
でいます。今後は画像データ通信やデータベース化が日常的に行われるようになることが予想され
ますが、膨大なデータベースから上位10件、上位100件というように画像を抽出し、そのつど
参照していては、時間がかかり効率的な検索とはいえません。今後は使い易いユーザインターフェ
ースで膨大な画像データの中から目的とする画像を効率的に検索する画像検索技術が必要となりま
す。
今回、当社は、数十万件規模の画像データベースの中からユーザが設定するキー画像と類似した
上位1,000件の画像を瞬時に検索し、全ての検索画像を仮想的な3次元空間に表示する類似画像
検索技術を開発しました。
開発した検索技術は、高速検索エンジン部とユーザインターフェース部から構成されます。高速
検索エンジン部では画像の色合いや質感、構図をパラメータとする画像特徴量を基に、数十万件か
らなる画像データベースを瞬時に検索し、類似度の高い上位1,000件を検索します。
一方、ユーザインタフェース部では、PC画面上の仮想3次元空間上に検索結果を表示します。
新たに開発した、1,000件の検索画像を3次元空間に星雲状に表示する可視化技術と、空間内を
ユーザが自在に動き回るウォークスルー機能により、ユーザは、検索された画像データの星雲の中
を自在に飛び回りながら、求める画像データを視覚的に捉え効率的に検索することがきます。
本技術は、PCのファイル容量や通信速度が飛躍的に増大するなか、必須の画像検索技術となる
ものと期待されます。また。本内容は5月31日から湘南国際村センターで開催される「情報処理
学会 フロンティア領域ジョイント研究会2000」で発表する予定です。
■技術の詳細
今回開発した類似画像検索技術の特徴は以下の通りです。
1.数十万件の画像から類似度の高い上位1,000件を瞬時に選び出す高速検索エンジン
画像自体の持つ特徴(色合い、構造、質感など)をパラメータとする画像特徴量に基いて、ユー
ザが指定した画像と類似した画像を検索します。画像特徴量の世界は、プログラム中では100〜
200次元の高次元空間として表現されています。各画像は、この高次元空間中のある点として表
現され、画像間の類似度は高次元空間中の距離により表現されます。
2.1,000件の検索結果画像全てを直感的に分かりやすく表示する3次元可視化技術
PC画面上の仮想3次元空間に検索結果を表示します。3次元空間は画像特徴量を軸として構築
され、キー画像を中心として検索された画像が配置されます。キー画像との類似性は画像の大きさ
で、各画像同士の類似性は画像間の距離で表現されます。複数のキー画像を用いた条件検索では、
キー画像と同数の画像の集合体(星雲)が空間中を漂う群れとして表示されます。ユーザの検索意
図を視覚的に表現できる可視化技術です。
3.3次元空間内を迷うことなく歩き回れるウォークスルー機能
ユーザが迷うことなく3次元空間中を動き回り検索結果画像を閲覧するために、それぞれ異なる
視点とウォークスルー機能を持つ2つのオブジェクト(カニとカメと定義)を空間中に配置してい
ます。カメは一般的なウォークスルー機能を持ち、自己中心的な首振り回転を行い、任意の方向へ
移動することができます。一方、カニは、カメを中心とした公転運動を行い、カメとの距離を一定
に保ちながら、カメの動きに追随します。この2つのオブジェクトを組み合わせて操作することで、
ユーザは空間中を迷うことなく、画像を閲覧することができます。
以上
|