日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 石橋 正)は、このたび、音楽配信用途など
の著作権保護が必要なデジタルコンテンツの保存用フラッシュカードとして、Secure
MultiMediaCard(以下、セキュアマルチメディアカード)を業界で初めて製品化し、16Mバイ
トの「HB288016SM1」を平成12年8月よりサンプル出荷します。
本製品は、三洋電機株式会社(以下、三洋電機)、富士通株式会社(以下、富士通)、お
よび当社が共同開発した汎用コンテンツ保護技術UDAC-MB(注1)を採用しており、強固なセキ
ュリティを実現しています。また、現在製品化されているフラッシュカードでは最小の
MultiMediaCard(TM)(以下、マルチメディアカード)(注2)規格の上位互換品であり、32mm
×24mm×1.4mmと、厚みも含め同サイズを実現しています。今回は、携帯電話機向け音楽
配信システムの規格「ケータイdeミュージック」(注3)のコンテンツ記録カードとして、フ
ァッション性を取り入れ、色もシルバー、ベージュ、オレンジ、ピンク、ブルー、ホワイト、
パープルの7色をラインアップします。
<背景>
近年、インターネットの拡大、およびPC、携帯電話などの個人への普及に伴い、あらゆる
デジタル情報について、この新たなアプローチによる配送が始められようとしています。特
に音楽情報の配信については、CD等による従来の店頭販売に加え、1)インターネット経由、
2)携帯電話のキャリア業者経由等へ広がっていくと推測されています。
しかしながら、実際は、違法コピー等による著作権侵害に対する懸念から本格普及に至っ
ていません。現在、インターネットからパソコンへの音楽ダウンロード配信で、これら不正
行為への対策を行なうためのコンテンツ保護技術仕様の策定がSDMI(Secure Digital
Music Initiative)(注4)で進められています。
こうした中、三洋電機、富士通、および当社の3社は、加入者の伸びが大きく、かつ、高
速データ配信サービスを実現しつつある携帯電話市場に注目し、この配信網と携帯電話機に
最適化したコンテンツ配信システムである「ケータイdeミュージック」規格を開発、昨年
12月に発表しました。そして今回、この規格に基づくフラッシュカードとして、16Mバイ
トのセキュアマルチメディアカードを製品化しました。
<セキュアマルチメディアカードについて>
本製品は、フラッシュメモリとコントローラを1チップ化したシングルチップを搭載してい
ます。フラッシュメモリ部には、多値技術(注5)を採用した0.25μmの128MビットAND型フラ
ッシュメモリを使用し、小型化を実現、コントローラ部には当社のRISCマイコン
「SuperH(TM)」(注6)をCPUコアとして採用することにより、高度な暗号処理を実現してい
ます。
製品の主な特徴は、次の通りです。
(1) 高度なセキュリティ機能を搭載
UDAC-MB方式に基づいた高い安全性を実現しています。カード自身に暗号化・復号化の機
能を持たせると同時に、暗号化・復号化の際に使われるライセンスキー(注7)等をカード内
の安全な領域に格納できるTRM領域(注8)を有しています。さらに、コンテンツ保護関連命令
セット(注9)を追加することで、音楽配信システムで要求されるセキュリティレベルを達成
しています。
(2) 既存のマルチメディアカードとの互換性を維持
マルチメディアカードとの上位互換性を保つため、機能のみならず、厚みも含め全く同一
の外形を採用しました。これにより、本セキュアマルチメディアカードは、コンテンツ保護
機能が必要な新たな機器だけでなく、既存のマルチメディアカード対応機器にも使用できま
す。既存マルチメディアカードと同様に、動作電圧は2.7〜3.6Vの低電圧動作が可能であり、
読み出し速度14Mビット/秒、書き込み速度3Mビット/秒と、業界最高レベルを実現していま
す。ピン数も7ピンで、マルチメディアカードと同一のピン配置です。
今後はさらなる大容量化を進め、32Mバイト/64Mバイト品を製品化していくと同時に、書
き込み速度の向上を図っていきます。
なお、本セキュアマルチメディアカード仕様を、独 Infineon Technologies AG(イン
フィニオン社)、三洋電機、および当社の3社でマルチメディアカード アソシエーション
(注10)に対し、コンテンツ保護機能付きマルチメディアカードのオープンスタンダードと
すべく提案しています。この技術により、音楽配信用途だけでなく、書籍、画像などコン
テンツ保護対策を必要とする各種コンテンツの保存と配信に柔軟に対応することが可能に
なります。
(注1) UDAC-MB(Universal Distribution with Access Control - Media Base):
コンテンツをセキュアマルチメディアカードなどに配信し、ユーザー間でやりとりす
る状況において、ユーザーが不便を感じることのないような合法的コピーおよび合法
的再生を実現するコンテンツ保護技術。
(注2) MultiMediaCard(マルチメディアカード):
独 Infineon Technologies AGの商標です。
(注3)ケータイdeミュージック:
三洋電機、日立、富士通の3社が共同で開発した携帯電話機・PHSに音楽を配信するシ
ステムの技術規格。この「ケータイdeミュージック」は、3社で共同開発した汎用コ
ンテンツ保護技術である「UDAC-MB」をベースにした規格であり、セキュリティガイ
ドライン、プロトコル規格、セキュアマルチメディアカード規格およびダウンロード
・再生システム規格から構成される。
(注4)SDMI(Secure Digital Music Initiative):
デジタル音楽の流通を不法コピーから守る技術仕様を取りまとめるために、1999年
2月に発足した団体で、RIAA(米国レコード産業協会)を始めとするコンテンツホルダ
ーを始め、ハード、ソフト、システム関連会社を含め、110社以上が参加しています。
既に、再生ポータブルプレーヤに関する技術仕様を定めた「SDMI Portable Device
Specification Part1 Version1.0」を公表しています。(http://www.sdmi.org/)
(注5)多値技術:チップサイズの縮小に有効な今後の大容量フラッシュメモリに適した技術
で、通常のメモリでは'0'/'1'の2つのしきい値レベルであるのに対し、
'00'/'01'/'10'/'11'の4つのしきい値レベルを持たせることで、1セルで2セル分の働
きを実現します。
(注6)SuperH(TM):SuperHは(株)日立製作所の商標です。
(注7)ライセンスキー:暗号化されたコンテンツを解くための秘密鍵(キー)を配信先のメデ
ィアに固有の公開鍵などで暗号化した情報。このライセンスキーは、ネットワークな
クなどを通して購入、または正当に移動することにより、セキュア マルチメディア
カード内に記録される。再生時に正当なデコーダチップ内に安全に渡して初めて暗号
化コンテンツを復号できる。
(注8)TRM(Tamper Resistant Module):タンパ・レジスタント技術は、半導体チップなど
の内部解析や改ざんを物理的及び論理的に防衛する技術です。例えば、チップ内部に
強固で粘着力の高いコーティングを施し、表面を剥がすと、内部の回路が完全に破壊
されるようにしたり、ダミーの配線を施したりします。TRMは、本技術を用い、形成
・構成されるシリコン領域、またはカードの領域です。
(注9)コンテンツ保護関連命令セット:コンテンツ保護用セキュアマルチメディアカード専
用に用意された暗号に関する命令セット。ENCRYPT、DECRYPT等の命令がある。
(注10)マルチメディアカード アソシエーション(MultiMediaCard Association):現在製
品化されているフラッシュカードでは、世界最小クラスであるマルチメディアカー
ド、および討議中のセキュアマルチメディアカードの標準化団体。現在、約70社の
参加メンバー会社で構成される。
■応用機器
●コンテンツ保護が必要なデジタル情報を取り扱う全てのパーソナル機器
音楽ダウンロード/再生機能付き携帯電話、ポータブル音楽プレーヤー、玩具、
ゲーム機などの携帯エンターテイメント機器
●デジタルビデオカメラ、デジタルカメラなどの携帯画像機器
●パームサイズPC、電子手帳の携帯情報機器
●スマートフォン、ページャ等の携帯通信機器
■価 格
製 品 名 | 容 量 | 価 格 |
HB288016SM1 | 16Mバイト | オープン価格 |
■仕 様
項目 | 仕様 |
メモリ容量 | 16Mバイト |
インタフェース | MultiMediaCard SPI(Serial Peripheral Interface) |
システム・パフォーマンス | 読み出し:14M ビット/秒 typ.(マルチブロックリード時) 書き込み: 3M ビット/秒 typ.(マルチブロックライト時) |
電源仕様 | 動作電圧:2.7〜3.6V 読み出し電流:40mA 書き込み電流:40mA |
読み出し・書き込み仕様 | 512バイト ブロックリード/ライト マルチブロックリード/ライトも可能 |
動作温度範囲 | -25〜+85度 |
外形寸法 | 32mm×24mm×1.4mm、7ピン *MultiMediaCardと同一のピン配置です。 |
以 上
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