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平成12年4月28日
両面受光型のシリコン太陽電池で世界最高クラスの変換効率を達成
― チップ裏面にもpn接合を設けた新構造を開発 ―
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  日立製作所は、このたび、両面受光型の単結晶シリコン太陽電池において、表面21.3%、裏面19.8%のエネルギー変換効率を達成しました(*1)。両面受光型は、直射日光に加え裏面に入射する反射光も利用し、太陽エネルギの利用効率を高めることを目的としたもので、今回の値は、両面合わせて世界トップのエネルギ変換効率となります。これは、太陽電池のチップ両面にpn接合を設けた新構造を採用することで、総合的な変換効率向上を実現したことによります。
  本研究は通商産業省ニューサンシャイン計画の一環としてNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からPVTEC(太陽光発電技術研究組合)を通じて委託された「応用型新構造薄膜太陽電池の製造技術開発」の成果です。

  太陽光発電は新エネルギーの中でも地球に優しいクリーンな電源として普及促進が図られています。しかし、地上で受け取れる太陽光エネルギーの密度は1キロワット/平方メートルと希薄なため、充分な発電電力を得るためには、エネルギー変換効率の高い太陽電池が必要です。近年の高効率化により、シリコン結晶太陽電池の変換効率は研究室レベルで、すでに理論限界(26〜28%)に近づきつつあります。そこで、更なる高効率化のために、太陽電池の裏面からも太陽光を入射させてチップの両面で発電する両面受光型太陽電池の開発が進めらています。

  日立では、平成8年に表面にpn接合を設けた片面受光型太陽電池を試作し、国内最高の変換効率を達成するなど、これまでシリコン太陽電池の研究に取り組んできました。今回、それらの開発で培ったプロセス技術と独自開発した3次元デバイスシミュレータによる最適設計により、チップの両面にpn接合を設けた両面受光型の単結晶シリコン太陽電池を世界で初めて試作し、その性能を確認しました。試作した太陽電池の変換効率、面積1平方センチメートルで、表面で21.3%、裏面で19.8%です。この値は、地上拡散光が太陽日射の30%と仮定した場合、太陽の高度が最も高くなる南中時、本開発の太陽電池を太陽に向かって垂直に設置すると、その発電量は1平方メートル当り272Wに相当します。これは、同条件下における従来製品の発電量130〜160Wを大きく上回ると共に、従来の世界最高の変換効率を持つ両面受光型太陽電池の発電量266Wをも上回る値です。
  本成果は、今後本格的な実用化が期待される結晶シリコン太陽電池において、いっそうの性能向上に道を拓くものです。今後さらに高効率化設計技術やプロセス技術、低コスト化技術等、実用化に向けた総合的な視点から研究開発を進めていく予定です。

  なお、本成果は5月1日からイギリス・スコットランドのグラスゴーで開催される第16回ヨーロッパ太陽光発電会議(16th European Photo-voltaic Solar Energy Conference and Exhibition)で発表する予定です。


■技術の詳細
本開発の太陽電池の特徴は以下の通りです。
(1)チップ両面にpn接合を設けることで、裏面で生成されたキャリヤの走行距離を短縮し、裏面効率の向上を実現しました。太陽光が太陽電池に入射すると、大部分が表面近傍で吸収され、キャリヤが生成されます。このキャリアをいかに効率良く収集するかが、太陽電池の効率を左右します。従来型太陽電池では裏面照射時に裏面近傍で生成したキャリヤは表面にあるpn接合まで走る必要があります。pn接合までの距離が遠ければ遠いほど、キャリヤは再結合し、消える可能性が高くなりますが、開発した太陽電池では裏面に設けたpn接合まで走るだけでよく、収集効率が向上します。
(2)両面に光を同時照射した場合の発電量は、通常、表・裏各面への入射光量とそれぞれの変換効率を掛け合わせた値の総和となります。今回、新開発の太陽電池の両面に同量の光を同時入射させた実験では、計算値より5〜10%高い出力が得られることを確認しました。これは、両面に設けられたpn接合に電流が分散され、チップ内部の抵抗によるロスが低減されるためと考えられます。
(3)シリコン太陽電池では、シリコン基板のライフタイムが短いほど、変換効率が低下します。表面にのみpn接合を設けた両面受光型太陽電池に比べて、本開発の太陽電池は、ライフタイムの短縮に伴う性能劣化が少ないことを、シミュレーションにより確認しました。シリコン基板のライフタイムを10分の1に設定した場合(他の条件は変更せず)、前者の性能劣化が16%であるのに対し、本開発の太陽電池では8%以下となりました。今回試作した太陽電池では、シリコン基板にライフタイムの比較的長いFZシリコン基板を使用しましたが、現在量産されているシリコン太陽電池ではライフタイムの短い太陽電池級CZシリコン基板を用いています。今回のシミュレーション結果は、CZシリコン採用時でも、両面pn接合タイプの有効性を示しています。

■注釈
(*1)エネルギー変換効率値は(財)日本品質保証機構(JQA)により測定され、認定された値です。
(*2)ライフタイム:キャリヤ寿命

以 上



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